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18-1 雨乞いと生贄の伝承(2.1k)

 40代の開発職サラリーマンだった俺が、剣と魔法の世界といえるこの異世界に転生してから一年と三百六日目。エスタンシア帝国軍従軍写真家による【盗撮】行為に逆上したジェット嬢が【滅殺破壊天罰】を発生させ世界中を震撼させてから五十日後。

 【魔王城】が【中央銀行】と【国際会議場】になってから三十日後。最後の【国際会議】が開催されてから十六日後の朝。


 【魔王城】の常勤医として日々草刈りをしていた臨死グリーンが、長期休暇を取得して修行に行くという。


「臨死グリーン。長期休暇にて【医者修行いしゃしゅぎょう】に行ってまいります」 シャキーン


「いってらっしゃーい」


 エントランスの座敷でくつろぎながら見送る俺とジェット嬢。


 出発するグリーンは背中に大きな【ハリセン】を背負っている。 最初の行先はアンダーソン領とのこと。

 なんでも【医療】の未来のために【怪獣女】の生き残りを捕獲するとか。

 よくわからないけど安全第一で頼むぜ。


 常勤医が不在になるのでその間に【魔王城】で重傷者が出た場合は、俺が【尻に敷かれる】形のジェット嬢の【回復魔法】を使う予定。

 だけど、【魔王城】営業開始以来【回復魔法】が必要になるほどの重傷者は俺以外には出ていないのでそれが必要になる可能性は低い。


…………


 しばらくすると【魔王城】入口から来客。


「雨が降らないんだ!」


 来客はオリバーだった。

 今日は第三回目の【国際会議】の予定だからそのメンバーとして来たようだ。

 そして、最近雨が降ってないのは俺達も知ってる。


あせる気持ちは分かるが、落ち着きたまえオリバー君」

 後からのっそりと入ってきたソド公が一言。

 その後ろにはイェーガ王とキャスリン王妃。


 ジェット嬢を車いすに乗せてテーブル席の方に移動。

 オリバーに事情を聞く。


「例年ならこの季節そこそこ雨が降るんだが今年は全く降らない。それに例年よりも気温が若干高い。そのせいで麦の生育が悪くなってる」

「エスタンシア帝国側のヴァルハラ平野でも同じで、むしろ、世界中で降雨量が減って一部地域では水不足が発生しておる」


 オリバーの報告に続きソド公も現状の説明。

 雨が降らないのは気になっていたが、そんな大変なことになっているとは知らなかった。

 この世界テレビもラジオも無いからな。


「気候変動か。何か原因があるのか? 火山が噴火したとか……」


 そこまで言いかけて俺も気付いた。

 もしかして、アレが原因か?


「…………」


 【国際会議】メンバー四人が気まずそうにジェット嬢を見る。


「エスタンシア帝国軍の不道徳行為により発生した【滅殺破壊天罰】が原因の一つではないかと考えられています」


 言いにくそうにイェーガ王が報告。


 やっぱりそれか。【滅殺破壊魔法】と広範囲の【火魔法】で発生させた熱エネルギーの量が大きすぎて、世界中の大気の流れにまで影響を与えてしまったということか。

 ジェット嬢が目を逸らしている。


「責任の追及はエスタンシア帝国にするとして、イヨ。魔法で雨を降らせることってできないか」

「無理よ」


 オリバーの質問にバッサリ即答するジェット嬢。

 俺もなんかできそうな気はしていたけど、できないと即答するのは意外だった。


「意外だな。ジェット嬢は水魔法苦手なのか? 焼き払うのなら広範囲にしていたと思うが」

「水魔法が苦手なのは確かだけど、雨を降らせるとかは魔法で何とかなる規模じゃないと思うわ」

「そのへんの加減がわからんが、確かに気候の操作に必要なエネルギーは桁違いだからな。雨が降ればいいなら【雨乞あまごい】でもしてみるか」


「!!!」


 全員ぎょっとして俺の方を向いた。


「アンタ【雨乞あまごい】できるの?」

「できるのか! できるなら【生贄いけにえ】を用意するぞ!」

「いや、できん。言ってみただけだ。あと、オリバーよ【生贄いけにえ】って何だ。この世界の【雨乞あまごい】は【生贄いけにえ】を使うのか?」


「そうか【魔王】様は異世界人だったな。まぁ、【雨乞あまごい】っていうのはこの世界で一般的な民間伝承なんだ。【魔王】に【生贄いけにえ】を捧げると雨が降るとかいう」

「あぁ、それで【魔王】の俺が【雨乞あまごい】を言い出したから皆食いついたのか。まぎらわしいことを言ってすまん。俺は【魔王】だが【雨乞あまごい】はできん」


 そんな民間伝承が残るあたり先代の【魔王】は一体何をしていたんだ。諸悪の根源じゃなかったのか。


「まぁ、これは特に根拠のないただの民間伝承です。だから【生贄いけにえ】を捧げる相手が【魔王】かどうかも地域差がありまして。多くの地域では川沿いの西側の山の中というような伝わり方をしています。だから元は【魔王】とは無関係の伝承だったのかもしれません」


 イェーガ王が疑問に答えをくれた。


「川沿いの西側の山の中というと【魔王城】がたまたま条件に合致するから、一部地域では【魔王】として伝わったということか」

「おそらくそういうことではないかと」


 日常が普通過ぎて忘れがちになるがここは剣と魔法のファンタスティック世界。

 もしかしたらこの【魔王城】周辺に実際にそれが出来るような何かがあるのかもしれない。

 だけど、【生贄いけにえ】を使うような方法ならわざわざ探して試す気にはならない。

 そして、俺がもし【できる】と言ったらオリバーは【生贄いけにえ】をどうやって用意するつもりだったのか。


 いや、考えるまい。

 追及するとまた恐い目に遭いそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 食の安全、そして基礎研究と開発の関係性を読み、うんうん、その通りと思っていたら、最後の最後にドえらいサプライズが!!(笑) ジェット嬢の決意の証とも考えられるこの行動。 この先が気になりま…
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