15-6 不戦の誓いとクーデターの悲報(1.1k)
キャスリン込みで【忘年会】をした十六日後の昼過ぎ。グレー以外のメンバー全員で【魔王城】入口広場に並ぶ。
南側にある村の方からサイレンの音が微かに聞こえる。それに合わせて、東に向けて全員黙祷を捧げる。
一年前のこの日、この時間。
あの戦場で両国の戦いは終わった。
両国の対等な国家関係構築のため。
今の平和な日常のため。
あの戦いで多くの命が散った。
何故戦わなくてはいけなかったのか。
二度と同じ過ちを繰り返さないために、これからどうすればいいのか。
それを考える日として両国はこの日を【不戦の誓い】の日と定めた。
この【黙祷】も両国共同の行事として毎年行うとのことだ。
グレーからは十日前に魚の干物の追加と手紙が届いた。それによると、グレーは戦友と一緒に【反斜面陣地】跡地で行われる【慰霊集会】にエスタンシア帝国側の【元・兵士】として参加するとのこと。
それで【魔王城】にはいつ帰って来るんだろう。
まぁ、仕事はしてるからいいけどさ。
◇◇◇◇
休戦一年後の黙祷を捧げて、全国民が【不戦の誓い】を共有した日から四日後の夕方。日も暮れようとする時間帯。相変わらずグレーは帰ってこないが、【魔王城】メンバーが夕食のためにテーブルに集まった頃に突然の来客。
来客はキャスリン。
「ごめんくださーい!」
「いらっしゃいませー」
今日は全員で飲食店風に返答。いつも通りの流れだけどこんな時間に来るのも珍しいし、何か様子もおかしい。酷く慌てているようだ。
「突然で申し訳ありませんが、一大事ですの」
エントランスに駆け込んできながらそう言うと、キャスリンはジェット嬢に手紙のようなものを渡した。怪訝な表情をしながらそれを読み上げるジェット嬢。
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ソド公国建国宣言
政治的無策により、山林を枯らし川を汚し大地を荒野にして北部平野住民の生活を破壊したエスタンシア帝国政府に、もはや国を名乗る資格は無い。
無能なる政府から北の大地と人民の生活を守るため、ユグドラシル王国【元・国王】としてこの大地に【ソド公国】の建国を宣言し、エスタンシア帝国政府に対し独立戦争を開戦する。
怒る命を刃に変えて立てよ国民。
正義の心と【北の希望】を武器として、己が欲望のために道徳心を忘れ技術の扱いを誤った者共に裁きの鉄槌を下すのである。
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「なによコレー!」
あんまりな内容に叫ぶジェット嬢。
「北部鉱山に技術支援に行っていたソド公が、現地で反乱軍を結成して武装蜂起しましたの」
その場にへたり込んだキャスリンが一言。
「何やっとるんじゃ あのオヤジー!」
●次号予告(笑)●
環境工学の権威として北部鉱山の製錬技術支援に向かったユグドラシル王国の【元・国王】は、【ソド公国】を名乗り鉱山施設跡地を要塞化してエスタンシア帝国に宣戦を布告。あろうことか有毒小麦【北の希望】を武器にすると宣言。
それに対しエスタンシア帝国は国内に残存する戦力を集結し、要塞化された鉱山施設を包囲。
一触即発の最前線。戦端が開くのを防ぐため背中合わせの二人は要塞上空から舞い降りる。そこで見たものは、停戦の糸口を見失い泥沼化していた両陣営のあんまりな現実だった。
そして、己が欲望のために道徳心を忘れ技術の扱いを誤った者共に裁きの鉄槌が下される。
次号:クレイジーエンジニアと道徳戦線
(幕間とかいろいろ入るかも)




