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14-6 やりすぎ品質保証部が示す 魔王への道(1.9k)

 【西方航空機株式会社】の格納庫にて、入場時の左右確認の怠った上に床の白線を踏んでしまった俺。


 【カイゼン室】から出てきた【品質保証部】に取り囲まれ、部長のウィルバーにによる俺に対する【品質指導】が始まってしまった。


「いけませんねぇ。いつも言っていますが、【品質】というのは【一事が万事】。普段の仕事、普段の生活、普段の言動。全てが影響するものですよ。図面に付いてしまった線のような汚れを消さずに出図したり、材料の温度特性を考慮せずに寸法許容差を設計したり、席替え作業中だからって通路の真ん中に荷物を放置して帰宅したり、女性に対して言ってはいけないことを口走ってしまったり。そんな小さなことが積もり積もって【品質不良】【製品事故】【労災】【滅殺破壊大災害】につながるんです。この世界の【品質】と【品格】と【道徳】を統括すべき存在である【魔王】様が、【品質保証部】の発祥の地であるこの格納庫で、それを全く理解していない行動をするのは、いけませんねぇ」


 ものすごい威圧感。

 背筋が凍る。

 冷や汗が止まらない。

 何も言えない。


 この会社の【品質保証部】は【魔王】よりも強い。


「残念ながら、大柄な【魔王】様はこのギロチン台に乗ることができません」


 残念じゃないから。

 全然残念じゃないから。

 絶対に乗りたくないから。


「代わりと言っては何ですが、【一夜漬けで学ぶ高品質世界のためのギロチン品質工学スペシャルコース】を受講していただきます」


 格納庫内にどよめきが上がった。


「何なのよそのコース。一体何を学べるの?」


 背中からジェット嬢の声。会話に参加したそうなので、俺は白線を踏まないように気を付けながら、ウィルバーに対して横向き姿勢を取る。


「おや、イヨさん。お久しぶりです。【魔王妃】様になられたとのことで、ご結婚おめでとうございます」

「あら。【高品質な発言】ありがとう」


「【左右確認を怠る】【白線を踏む】という【低品質行動】を取ってしまった【魔王】様は、この世界の【品質】と【品格】と【道徳】を統括する存在であるという自覚が不足しているようです。なので、この特別研修を通じてより高品質な【魔王】様となれるように我々【品質保証部】が微力ながら力添えさせていただきたいと思います」


 さっきも言ってたけど、この世界の【魔王】ってそういう物なの?


「そうね。【魔王妃】としてぜひお願いするわ」


 ジェット嬢もそれでいいの!?

 しかもコレ受講するの!?



 その後俺達は、【カイゼン室】地下一階にある特別品質講義室でジェット嬢と隣り合わせで座り、徹夜で【一夜漬けで学ぶ高品質世界のためのギロチン品質工学スペシャルコース】を受講した。


 【品質保証部】九名は交代しながらも、この世界の文字が読めない俺にも分かるように講義をしてくれた。

 【統計学】等を元にした俺の前世世界でもなじみのある【品質工学】だけでなく、【紳士の在り方】【道徳心の大切さ】【男の生き方】等、高品質な言動や高品質な人生観を学べるとても充実したものだった。


 俺とジェット嬢に配布された研修テキストは、八百ページぐらいある分厚いものだった。

 俺はこの世界の文字が読めないので大半は解読できないのだが、巻末の三十ページぐらいは図が主だったので俺にも理解できた。


 あのギロチン台の詳細設計資料だ。

 このテキストにこのページが本当に必要か、それは俺には理解できなかった。


 俺は【魔王】呼ばわりされてからなし崩し的に【魔王】を名乗っていた。でも、その意味を理解していなかった。

 しかし、今日の出来事で俺は理解した。俺がどんな【魔王】になるかは、俺が決めていいんだ。

 むしろ、俺が決めなくてはいけなかったんだ。


 俺は、この研修を通じて【魔王】の在り方を決めた。

 この世界の【品質保証部】だ。


 【品質保証部】は製品を【出荷停止】とする権限を持っている。会社に対する顧客の信頼を守るため、顧客を品質不良による事故から守るため、必要と判断としたときに行使する権限だ。

 【品質保証部】の【出荷停止】は社長でも覆すことはできない。製造業における最強の権限だ。

 

 俺は、この世界の【品質保証部】として【品質】と【品格】と【道徳】を統括する【魔王】となり、この世界の必然で起きてしまう惨事を止められる存在になろう。

 あの戦争や、トーマスやジョンの家族のような犠牲を止められる存在になろう。


 俺にその役割が務まるかどうかは分からない。でも【魔王城】の仲間達や、ジェット嬢の力があればこの世界でできないことは無いはずだ。

 それが、俺のこの世界の【魔王】としての仕事と役割だ。


 この会社の【品質保証部】は【魔王】に道を示した。

●次号予告(笑)●


 秋も終わり、冬が近づく。


 食欲の季節、読書の季節。

 両国国民の間にゆっくりとした時が流れる。


 そして年末が近づく。あの戦争からもうすぐ一年。

 あの日、あの時、この日常のために散った命。


 両国国民はその時間に合わせて黙祷を捧げる。


 その後、両国民の願いを踏みにじる凶報が届く。

 その首謀者は……。


次号:クレイジーエンジニアと不戦の誓い

(幕間とかいろいろ入るかも)

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