表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/207

13-7 戦慄! 地獄のマジックショー(2.8k)

 【豊作2号】の流通を止めるため、【エスタンシア商工会議所】の三階の会議室にてジョンケミカル社の重鎮と交渉するはずだった。


 でも、いきなり銃で撃たれた。


 ジェット嬢がすかさず治療をしてくれたようだが、【回復魔法】を使ったせいでおれは【波動酔い】で意識を失い……。


 ガブリ


「どぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 左前腕部中央あたりに激しい痛みを感じて思わず叫ぶ。


 なんかすぐに痛みは引いたので状況確認。俺は意識を失う前の場所で立っていた。

 経験上【回復魔法】の【波動酔い】で意識を失うと一日二日ぐらい寝ていたが、今回はすぐに目覚めたようだ。意識を失った場所が悪すぎたので助かった。

 

 あまりの痛みに思わず振り上げた左腕に重さを感じる。そちらを見ると、俺の左腕にかじりついたジェット嬢が背中向きでぶら下がっていた。何コレ。犬か?


「…………」 プラーン


 何か言いたげなジェット嬢の背中と後頭部が見える。かじりついてぶら下がるというのも人間技じゃあないんだが、とりあえず降ろすか。

 ジェット嬢の義足は衝撃厳禁なので、腕をゆっくり降ろして、ジェット嬢を慎重に着地させる。


「いきなり腕を振り上げないでよ。びっくりするじゃない」


 咥えていた俺の左腕を離したジェット嬢がハンカチで口元を拭きながら一言。痛みは無いけど作業服の袖が血まみれだ。あんまりすぎる状況でどこから突っ込んでいいか分からない。とりあえず普通に応えるか。


「すまん。あまりの痛みについ」


 部屋を見渡すと、やっぱりあんまりな状況が広がっていた。

 男三人が部屋奥の壁にもたれてへたり込んでいる。その横には、【生焼け】にされた【ザ・ヒットマン】の方が転がっていた。


 部屋の中央あたりにはバラバラになった机と椅子の残骸。なんか、机の一部が30mm角ぐらいの大きめのサイコロのように切断されて沢山転がっていたり、椅子の金属部分が飴細工のように融かされて曲がっていたり。そして壁のあちこちには七本セットの巨大な爪痕つめあとが刻まれていたり。さらに床の一部が赤熱していたり。


「ジェット嬢よ。コレは何をしたんだ?」

「【マジックショー】よ」

「それは、どんな【マジックショー】なんだ?」


「うーん。こんな感じかな」


 ジェット嬢はゆっくりと男三人の方を向くと、銃弾らしきものをポケットから取り出して全員に見えるようにかざした。口径10mmぐらいの拳銃弾か。


「銃弾だな。俺に命中したやつか」

「そうよ」


 そう言って、ジェット嬢はその銃弾を口に入れた。そして。


 バキッ ゴリッ ベキッ ボリボリ


「!!…………」


 男三人は青ざめた顔でこちらを見ている。

 俺もちょっと引いた。


 ジェット嬢はハンカチを口にあてた。

 何かを吐き出しているようだ。

 そしてそのハンカチを広げて軽く振る。


 カチン チリン カン 


 バラバラになった銃弾の破片が床に落ちる。

 それを見た男三人は真っ青になって震えている。

 そりゃそうだ……。


「こんなのもあるわ」


 そう言ってジェット嬢は左腕を横に出し構える。

 なんかもう怖い。


「クマ・の・ツメー!」


 ジェット嬢が掛け声と同時に左腕を横に振ると、それに合わせて部屋の奥の壁に七本の爪痕つめあとが走る。

 微妙に腕の動きと爪痕つめあとが合ってないから腕を動かすのは見せかけなんだろう。まぁ、魔法を使ってるから【マジックショー】といえばそうか。

 でも言っておくことはあるな。


くまの爪は七本じゃないぞ」

「そうなの? あの【絵】では七本だったわよ」


 帰ったらよく見ておこう。


 パチ パチ パチ パチ


 俺の背後から緩やかな拍手の音。後ろを見るとトーマスが居た。姿が見えないと思ったらそこに居たのかトーマスよ。


「えーと、意味不明な【マジックショー】ありがとうございます。おかげさまで久々に楽しめましたよ」

「トーマスよ。分かる範囲で【種明かし】をしてもらえまいか。俺には状況がさっぱりだ」


「えー、【種明かし】ではないですが、状況説明ですね。正面中央の赤ネクタイのスーツの方が、ジョン社長です。その両脇は副社長と専務ですね。銃を撃った【生焼け】の方は私は初見です」

「やっぱりジョンケミカル社の社長さんが居たか。そのつもりで来たからそうなんだろうけど、会合に来た相手をいきなり銃撃するのがこっちの習慣なのか? 命がいくつあっても足りんぞ」


「えぇ、先方があの様子じゃぁもう普通に会議はできなさそうですが、もとより普通に会議するつもりは無かったみたいです。【隠蔽いんぺい】された【不都合な真実】に関わると命がいくつあっても足りません」


 なんてこった。

 こっちは穏便に済ませようとしていたのに、相手は最初から物騒路線だったということか。


「トーマスさん。後はお任せしていいかしら。話は通じるはずよ」

「えー、了解です。後は何とかしておきます。結果報告は三日後の昼過ぎにでも。そろそろ人が来そうなので、そこから飛んで一旦帰ってもらえますか。お連れの方には伝えておきます」


 トーマスは会議室の大窓を示しながら言う。それを聞いたジェット嬢は俺の背中によじ登り、背中合わせで金具を固定。またアレをするのかと嫌な予感。


「じゃぁ、後はお願いするわ」

 

 ガラン ガラン


 またやっちゃったよ。俺の背中に張り付いて義足を落とすヘンテコアクション。そして今回はスカートの切り離しではなくワンピースの脱皮らしい。


「へたり込んでる三人は好きにしていいけど、転がってる【生焼け】は私のところに届けて頂戴。こっちの医療では治療が難しいはずよ」

「えー、了解です」


「トーマスよ。好きしていいとは言っても、あんまり物騒なことはするなよ。あれでも奥さんの勤め先の社長さんだよな。息子さんも居るんだろ」

「えぇ、話し合いをするだけですよ。妻は長らく【行方不明】でしたが、今ので行先の目星がつきました。その件についても話をしたいと思います」


「なんだと。じゃぁ息子さんは……」

「えーと、まぁ、息子も妻のところですね。【北の希望】の本格栽培と市場流通を事前に止めることができたのは息子の功績なんですよ。これは私のちょっとした誇りです」


「……本当に、どうしようもないわね。行くわよ。そこの窓から背面ダイブ」

「了解だ」


 俺達は、めちゃくちゃになった会議室の大窓から【カッコ悪い飛び方】で離脱した。今回は金貨の力で穏便に済ませようとしたけど、結局、デタラメ全開の物騒エンド。これはウラジィさんでも読めなかっただろう。本職の【政治家】にしても【政治的判断】っていうのは難しいものなんだろうな。


 この状況下で、俺は何ができただろう。

 俺はどうすべきだっただろう。

 今回の俺の判断は正解だっただろうか。

 考えても答えは出ない。


 上空で旋回する【双発葉巻号】に【カッコ悪い飛び方】で急上昇して接近。今日の夕食はアンとメイの作り置きだ。明日には帰って来るといいなぁ。


 なんだかんだ言って、あの二人が居ないと【魔王城】は回らない。

●次号予告(笑)●


 何処で何を間違えたのか。隣国の自称商売上手は暗い過去を持っていた。そして、その仲間達も。誰にも悪意は無かった。ただ、大切な物を守るために仕事し、その役割を果たそうとしただけだった。


 歴史の必然で起きた結末を目前にして男は再び葛藤かっとうする。

 この世界で、自分にできることは無いかと。


 【魔王】を名乗り続けた男は、【魔王】の意味を知らなかった。

 だが、ついにその意味に気付く。


 道を示したのは、かつて男が導いたあの青年。


次号:クレイジーエンジニアと魔王の品質

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ