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13-3 今日を生きる副魔王(1.5k)

 昼食後、会議再開前にちょっと休憩時間。

 ジェット嬢は座敷で資料を読みたいらしいので、俺とウラジィさんで外を散歩。【魔王城】裏の井戸のあたりに来た。井戸端会議だ。


わしはもう長くない」

「ウラジィさんにしては珍しく弱気じゃないか」


わしもこの世界の文字が習得できんかった」

「ウラジィさんも無理だったのか」


 ウラジィさんは本職の【政治家】で、前世世界では多国語対応できていたはずだ。そのウラジィさんがこの世界の文字を習得できないとなると、これは【異世界転生】の【縛り】に該当する可能性が高い。


「なんだろうな。わしは前世では言語の習得は得意だったがな。歳のせいかな。あと、なんか迎えが来ておるような気もする」


「言語の習得ができないのは【異世界転生】の【縛り】みたいなもので、歳のせいだけじゃないとは思う。そして、迎えって何だ?」


わしにもよくわからん。まぁ、先が長くないのは何となくわかる。なんせ70代のジジイだ。しかも一度死んどる」


 何となく二人で井戸を覗く。本当に深い。水あるのかな?


「弱気で言っとるわけじゃないぞ。残り時間が少ないからこそ、仕事を終えて役割と果たしたいと思っとる」

「仕事と役割? ウラジィさんの【副魔王】としてのか?」


「【副魔王】が何なのかはわからん。これはわし遺志いしだ。前世でわしが何したか知っとるだろ。意図したものではないとしても、わしは多くの悲劇を作り出した。だからこそ、この世界では皆の幸せな暮らしのために働きたいと思っとる」

「ウラジィさん……」


「一度死んだ70代のジジィだからな。わし自身に未練は無い。できることを探しながら【朝目が覚めたら今日は生きる。明日が無くても悔いが無い今日を生きる】そんな感じの毎日を楽しんどる」


 ウラジィさんは楽しそうに笑った。人生の到達点というのはこういう人生観なのだろうか。俺は40代オッサンだったが、現時点ではこの領域に手が届かないと感じた。


「若造、そろそろ会議に戻るぞ。早めに終わらせて首都に帰りたい。今日も店を開けないといかんからな」


 そう言って【魔王城】に戻るウラジィさんの背中に、俺は憧れに似た何かを感じた。

 俺もあんな70代の爺さんになれるだろうか。


…………


 午前のメンバーが再度集合し、会議の午後の部が始まる。エスタンシア帝国を怒らせないようにどうやって【豊作2号】の使用を止めさせるか。難しい議題だ。


 ウラジィさんがスッと手を挙げる。

 前世で本職だっただけあって、この御方も美しい動き。


「どうぞ」


 ジェット議長が発言を促す。


わしの前世世界でも行儀の悪い商売人はろくな事しなかったが、それに比べると今回は対処がしやすい。なんせこっちには武器がある」


 キャスリンがゆるゆると右手を上げた。


「どうぞ」


 全員が警戒する中、ジェット議長が発言を促す。

 そしてキャスリンが【×印マスク】を外す。


「その武器というのは、地元で物騒な異名を持ち、大都市跡地を一人で焼け野原にして、一瞬で地形を変え、王城区画をあっという間に瓦礫がれきに変える【国一番の危険人物】であるこちらの」 「マスク!」


 再び俺と【辛辣しんらつ長】とイェーガ王の非常ブレーキ。

 キャスリンは【×印マスク】を装着。


 確かに破壊力は抜群だが、それは武器としては使えない。

 そして【国一番の危険人物】は貴女あなたの方です王妃様。


 ジェット議長はイェーガ王に目線で合図。

 懲りないキャスリンは今日もまた【あの医務室】に送られるのだろう。


「武器ならそこにあるだろう。今回はアレが一番有効だ」


 呆れた表情でウラジィさんが魔王城エントランス右端を示す。


「あー、なるほど」


 満場一致で方針は決まった。

 最年長者であり、知恵者のウラジィさんは本当に頼りになる。

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