12-8 隠蔽の代償(0.9k)
トーマスの小屋からの帰路。【着艦】した【双発葉巻号】機内にて。
貨物室側から操縦室を見ると、ブルーが操縦。イエローは副操縦士席に座っている。イエローも免許取るのかな。
「理屈は分かるけど、やっぱり納得いかないわ。【隠蔽】なんてことをしていたら、後で困ったことになるわよ」
機内貨物室で専用の椅子に座る俺の背中でジェット嬢がぼやく。
「あちらの国の話だから俺達が納得する必要は無いだろう。道徳的には良くないが仕方ないこともあるさ。帰ったらこの件を知るメンバーに事情を伝えて、【情報管理】を徹底させよう」
「何故だか分からないけど、そんなことをして無事で済む気がしないわ」
知りたかった情報は得られた。
そして、今回は【不都合な真実】の【隠蔽】という大人の判断もやむなしと悟った。
北部平野の状況は気がかりではあるが、無用な争いの回避とあちらの国の【技術者】の次回作のためにも、今後はこの件については目立った行動は控えたほうがいいだろう。
エスタンシア帝国側のヴァルハラ平野が麦畑になれば、あとは時間が解決する話だ。
無用な争いを避けるためなら【隠蔽】もやむなし。
【魔王】として思った。
◇◇◇
トーマスメタル社の小屋でジェット嬢が商売上手のトーマスにコテンパンに論破された日から三日後の午後。
俺とジェット嬢がいつものちゃぶ台にて、報告書の添付資料に含まれていたエスタンシア帝国北部平野の【航空写真】を眺めていると、入口から職員二人がすごい勢いで帰還。
「ブルーとイエロー、至急の伝言を受け取り帰還しました!」 シャキーン
俺とジェット嬢の居る座敷の前でシャキーンと帰還の挨拶をするのは、二日前からサロンフランクフルトに出張に行っていたブルーとイエロー。
トーマスメタル社上空で空中待機中に【双発葉巻号】機内でブルーがイエローに飛行機の操縦を教えていたそうだ。
そこで一通りの訓練をしたので、イエローの【航空機免許】取得のために二人でサロンフランクフルトに行っていたのだ。
「至急の伝言って何かしら」
「エスタンシア帝国の開拓団がヴァルハラ平野に新規開拓した麦畑で【豊作2号】を使用予定とのことです!」
「な・なんだってー!」
【隠蔽】なんてしたら、結局ろくなことにならない。
【魔王】として反省した。
●次号予告(笑)●
殺虫剤として優れた性能を持つ【豊作2号】。耕作の手間を削減し、収量を増大できるその効果より、エスタンシア帝国北部平野の農家に大歓迎された傑作であった。
この薬剤の販売により、製造元のジョンケミカル社は急成長。工場設備や研究開発への投資を充実させ、技術の進歩に貢献。食料生産量の増大とあわせてエスタンシア帝国の発展を支えた。
耕作不適地となった北部平野からヴァルハラ平野に移住した農民達は、当然のように【豊作2号】ありきでの作付けを計画する。
それが、肥沃な大地を数年がかりで耕作不適地に変えてしまう危険な薬剤であることも知らずに。
止めなくてはいけない。
だが、止める理由を説明できない。
休戦中とはいえ、敵国側の隠蔽された不都合な真実。
開戦理由には自国側にも隠蔽された落ち度がある。
下手をすると、無用な争いを生む。
立ち回りが難しい状況下で、知恵者の【あの御方】が久々に帰って来る。
「武器ならそこにあるだろう。今回はアレが一番有効だ」
次号:クレイジーエンジニアと商売上手
(ゴエイジャーの活躍が入るかも)




