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12-5 なにもかもおかしいの結論(2.6k)

 一升瓶メイドのアンとメイが【配慮不足】の【着陸】のせいで深夜飲酒でグダグダになってから十二日後の午前中。

 【魔王城】エントランスの座敷にて、俺とジェット嬢と【辛辣しんらつ長】とキャスリンでちゃぶ台を囲んでいる。


 エスタンシア帝国で収集したサンプルの調査結果の中間報告を確認しているのだ。とはいえ、俺はこの世界の文字が読めないので読んでもらっている形だが。


「これは、ひどいわね。まさに【なにもかもおかしい】だわ」

「【鉱毒】だけじゃなかったんだな」


 エスタンシア川上流で水や流域周辺の土が【鉱毒】に汚染されているのは予測通りだった。

 問題は下流側だ。


 元は麦畑であったと思われる場所の土に、植物を強力に枯死させる成分が含まれていることが分かった。しかも、北部平野穀倉地帯の広範囲。ほぼ全域だ。

 また、北部平野の耕作放棄地の中にある村で回収した【豊作2号】に同様の作用があったとか。


 そして、耕作放棄地に残された麦は強力な慢性毒性のある危険な植物だったと。

 その植物については、外観が麦と区別がつかないため種子が流出したら危険と判断。一旦研究を終了して採取した試料を容器やバッグごと全部焼却処分したとのこと。

 

「その毒の麦は危ないな。種が落ちて何処かに自生されたら厄介だ。【双発葉巻号】に種とか落ちてないか確認したほうがいいんじゃないか」

「そのへんは大丈夫です。採取容器も試料を落とさないように工夫されていますし、あの日試料を機から降ろす際に機内を隅々まで確認しました。ソド公は昔からそういう部分は徹底しています」


「そうか。でも、俺やジェット嬢の着衣に付着していた可能性はある。この【魔王城】周辺は当面は注意が必要だな」

「グリーンに監視させるわ。【魔王城】周辺で麦のようなものが生えてきたら、早めに集めて焼き払いましょう」


「【豊作2号】についてですが、平野部で回収したものとトーマスメタル社で入手したもので作用に違いがあるようです。トーマスメタル社にて入手したほうには、植物を枯死させる作用は無かったと」


 【辛辣しんらつ長】は引き続き【豊作2号】が気になるようだ。

 俺も確かに気になる。俺が【草を枯らせる魔王】にされた原因も、エスタンシア帝国北部平野の荒野化もこれが関連してそうな気がする。


「【豊作2号】に植物を枯らせる作用があるなら、そんなものを麦畑にくのもおかしいわ。不作になって当然じゃない」

「【辛辣しんらつ長】よ。例の毒麦が生えていた場所の土の調査結果はあるか。その土に草を枯らせる成分があったかどうかが知りたい」

「少々お待ちください【魔王】様」


 【辛辣しんらつ長】が報告書の添付資料から目的の記述を探している。

 分量が多いので大変かもしれんが、よろしく頼む。


 ちなみに、報告書を持ってきてくれたキャスリンもちゃぶ台に同席している。

 でも今日は口数が少ない。


 なぜなら、デタラメコーディネイトのマスクには赤い【×】印が描かれている。


 前回来た時の【立場的にマジで危ない問題発言】が原因でいろいろ自重を命じられているようだ。

 【ダメ発言癖仲間】として親近感がわいてきた。

 俺も発言には気を付けよう。【魔王】として。


「お待たせして申し訳ありません。ありました。毒麦が生えていた場所の土にも、草を枯らせる成分は含まれていました」


 しばらく報告書の添付資料をめくっていた【辛辣しんらつ長】が声を上げる。


 やっぱりそうか。

 そうなると、【豊作2号】の草を枯らせる作用はあの毒麦には効果が無いと。

 ある種の【薬剤耐性作物】か?


「ジェット嬢よ。この世界には生物を改造するような技術は存在するのか?」

「何? アンタ【魔物】でも作りたいの?」


「確かに【魔物】が作れるなら【魔王】ぽいけど、気になったのはそこじゃないんだ。この世界に農作物の【品種改良】とかそういう技術があるかどうかだ。例えば、あの毒麦みたいに植物を枯らせる成分で枯れないような麦を作る技術だ」

「【品種改良】と言えば、農園の端の区画でオリバーが細々と研究しているのを見たことがあるわ。育ちやすい麦の苗同士を交配させて、栽培しやすい麦の種を作るんだって。国内各地に研究仲間がいるみたい」


「【品種改良】の考え方と基本的な手法は実用化されているのか。でも大幅に変えるようなものではなさそうだな」

「【魔王】様の前世世界ではそのような技術があったのでしょうか」


 【辛辣しんらつ長】が関心を示した。

 【辛辣しんらつ長】も何気に研究者気質なのか?

 【クレイジーエンジニア】の仲間なのか?


「【品種改良】の一種ではあるんだが【遺伝子組み換え】と言って、作物に殺虫剤や除草剤への耐性を付けるような改造を行う技術があった。畑に除草剤をいてもその作物だけは枯れないようにできるから、栽培コストを下げて収穫量を増やせるんだ」

「枯れずに育つように【品種改良】しても、毒性があって食べられないんじゃ意味が無いじゃない。それに【豊作2号】は殺虫剤って言ってたわよ」


「それもそうだな。それに同じ【豊作2号】でも試料の違いで作用が違うのも気になる。耕作放棄地で回収した瓶の中身は別物だった可能性もあるな」

「じゃぁこの結果を持って、トーマスさんのところに行って聞いてみましょうか」

「そうだな」


 話をまとめようとしたところで、【×印マスク】を付けたキャスリンがゆるゆると右手を挙げた。

 何か言いたいらしい。


「……どうぞ」


 ジェット嬢が発言を促すと、キャスリンは【×印マスク】を外して一言。


「雑草とかを枯らせるその薬剤と、その薬剤で枯れないその麦の種をセットにして農家に売ったら、草刈りせずに耕作できる麦として大儲けできないでしょうか」

「俺の前世世界で確かにそういうビジネスモデルあったけど、この麦は栽培しても食べられないからな。毒だからな」


「キャスリン……。最近やたら儲け話にこだわってるけど、何があったの?」

「王宮の資金難がひどくて、つい何か収益源が無いか考えてしまうんですの」


 それ、ジェット嬢が原因だよな。


「エスタンシア帝国に居る商売上手の知り合いに会いに行こうと思うけど、キャスリンも一緒に行く?」


 ジェット嬢よ。それはトーマスの事か?

 でもトーマスの事を商売上手だとは思ってないよな。


「行きたいのですけど、私は【出国禁止令】の期間が終わっておりませんの……」


 なんかこう、王の苦労を感じる。

 がんばれイェーガ。負けるなイェーガ。

 最近全然会ってないけど、陰ながら応援しているぞ。


 【魔王】として。

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