12-4 独身メイドへの配慮不足、再び(1.4k)
アンとメイに【配慮不足】を指摘された十一日後の夕食後。
【西方航空機株式会社】から届いた飛行補助アイテム試作品のテストのため、俺はジェット嬢を持って【魔王城】入口広場の東端の崖っぷちに立っていた。
「このへんでいいかー」
「もう少し崖側に出せないかしら」
今回の試作品はジェット嬢単独飛行用のボディーボードのようなものだ。
とはいえ、海遊び用のボードとは形が大きく異なり、長さ1.4m、幅1.6mぐらいの幅広の三角形だ。前世世界で言うところの全翼機に似ている。
もっと言うなら、俺が前世で好きだったロボットアニメに出てきた大気圏突入用のアレに近い。
ジェット嬢がそのボードに腹ばい姿勢で乗ることで【ジェット☆アーマー】となり、飛行時の風圧から身体と着衣を守れるため高速飛行が可能になるという。
そして今、【ジェット☆アーマー】となったジェット嬢を背後から縦姿勢で持ち上げて崖の上から差し出しているところだ。
子供が喜ぶ【高い高い】を崖から差し出してしているような、なんか虐待っぽい光景。
「推力出すわよー」
「いいぞー」
魔力推進脚から推進噴流。腕に感じる荷重が軽くなる。ジェット嬢を崖から差し出しているので推進噴流は崖下の方へ。下に道が無い場所を選んでいるので問題は無い。
「離していいわ」
「了解」 パッ
【ジェット☆アーマー】状態で離陸成功。
垂直姿勢飛行でゆっくりと崖から離れていく。姿勢制御はいつぞやのロケットボートで使った風魔法が使える。
また、ジェット嬢の手元から操作できる動翼もついているので、揚力飛行時は飛行機としての操縦もできるそうだ。
『じゃぁ行ってきまーす。夜中には帰るから待っててねー』
「いってらっしゃーい」
垂直姿勢飛行のまま距離を取りつつ、よく通る声で出発の挨拶。
聞こえているかどうか分からないが俺も返す。
そして勢いよく垂直上昇。
ここでも垂直上昇時に下から見上げてはいけないルールは順守する義務がある。
【ジェット☆アーマー】状態ではスカートを手で持つことができないので、推進噴流による着衣の破損を避けるためにスカートを内側から膨らませるための部品を入れているとか。アンによると【パニエ】という部品らしい。
それ故に、下から見上げてしまった場合の危険度が高い。
そんなことを考えていると、視界の上端に小さな金色の光。
【ジェット☆アーマー】が高高度を水平飛行で南に飛んでいくのが見えた。かなり速い。あの状態なら【双発葉巻号】を追い越せるんじゃないだろうか。
便利なアイテムを作ったものだ。
【ジェット☆アーマー】状態での着陸は離陸と逆手順の予定。
崖側から垂直姿勢飛行で背中向きで接近し、俺が後ろから捕まえる。アンとメイにも【配慮】できている方法だ。
…………
深夜未明。ジェット嬢が帰ってきた。
しかし、ボードは途中で落としてしまったそうで、手ぶらの単独飛行だ。
やむなく再びアンとメイの目の前で【配慮不足】のあの【着陸】。
その結果、アンとメイはテーブル席でグダグダの深夜飲酒状態に。
それを遠目で眺める背中合わせ状態の俺とジェット嬢。
「私とメイへの配慮が足りないって」 グビグビ
「配慮よ。配慮なのよ。配慮が欲しいのよ」 ゴクゴク
「今夜は【残業】で飲み放題!」 シャキーン
「それは無いわ」 スパッ
「えーっ!」 ショボーン
人には優しいこともあるが、仕事にはおおむね厳しい。
そんなジェット嬢からも微かに酒の匂いがする。
今日はどこでどんな【夜遊び】をしてきたのやら。




