12-3 独身メイドへの配慮不足(1.1k)
エスタンシア帝国北部から大量の試料採取をしたのち、トーマスメタル社にて【豊作2号】の新品と資料を受け取った三日後の夜中。
もうすぐ日付が変わるぐらいの時間だが、俺は魔王城入口広場にてジェット嬢の帰還を待っている。
現地で採取した試料はあのまま首都まで空輸してソド公の環境化学研究所で分析中だ。後から入手した【豊作2号】の新品と資料も後追いで届けて同じく分析中。
やっぱり結構時間がかかりそうなので、この件については俺達はしばらく待ちだ。
ジェット嬢は他にもいろいろやりたいことがあるらしく、今日は夕食後に単独飛行で離陸して【夜遊び】に出かけた。
ジェット嬢は俺が居ないと【着陸】ができないので、俺が先に寝るわけにはいかない。
月の無い夜。俺一人だと暗くて動けないので、アンとメイに残業を頼んで、一升瓶照明の明かりを借りながら空を見上げる。
夏の星空を楽しみつつ、いずれ来るであろう金色の光を待つ。
南側より低高度で接近する金色の光を発見。到着だ。
『お待たせー。着陸用意ー』
よく通る声が聞こえる。同時に、魔王城入口広場が広範囲に照らされる。ジェット嬢の火魔法応用による広範囲照明だ。
それを見て、アンとメイは推進噴流を避けるため、遮蔽物に退避。
ジェット嬢が魔王城入口広場の隅に来た。
そして【着陸】のために俺に接近する。
【着陸】の方法は、サロンフランクフルトの裏山でやった方法と同じ。正面から接近するジェット嬢を俺が抱きとめる形だ。
ジェット嬢は単独飛行中に両腕が自由に使えないので、それ以外にやりようがない。
「ただいまー」
その方法で無事に【着陸】して推進噴流を止めたジェット嬢が一言。
そして、俺の背中に回り込んで金具を固定。いつもの背中合わせスタイルに。
シュタタタタタタタタタ
推進噴流が止まり静かになった入口広場にて、背後からアンとメイの駆け寄る足音。
「アンタ達のその着陸、目の毒!」
一升瓶を振り上げて、俺達を指差しながらアンとメイが叫ぶ。
「配慮不足!」
「いろいろ配慮不足!」
「なんかこう配慮が足りない!」
「とてつもなく配慮が足りない!」
「ウワァァァァァァァァン! 水没してしまえー!」
シュタタタタタタタタタタタ
なんかこう、二人で激しくまくし立てて【魔王城】に駆け込んでいった。
「ジェット嬢よ。アレは一体何が言いたいんだ」
「うーん。よく分からないけど、水没はイヤよ」
【星空の下で抱き合う男女】にでも見えたのだろうか。
あの【着陸】は失敗するとお互い大怪我する真剣勝負の大技だから、そういうつもりでやっているわけではないのだが。
でも、端から見ると【星空の下で真剣な表情で見つめ合い抱き合う男女】ではあるのか。
「ちなみに、アンとメイは独身なのか?」
「そうよ」
確かに【配慮】は足りなかったのかもしれない。




