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11-4 新婚旅行のおみやげは有害物質?(2.8k)

 暴走しかかったキャスリンに説教した後の昼休み。エントランスのテーブルで皆で集まって食事中に、草刈り担当のグリーンから相談を受ける。


「【魔王】様。台地の雑草が変なんですよ」

「どこが変なんだ」


「普段は刈っても刈っても生えてくるのに、生えてこなくなった場所があるんです」

「刈るのが楽になっていいんじゃないか。広い範囲なのか?」


「小さい範囲なんですが、そういう場所が点々と続いていましてちょっと不気味なんですよ。後で見てもらえますか?」

「見てみよう。後で案内してくれ。前世世界の知識が何か役に立つかもしれん」


…………


 ジェット嬢を背負って【魔王城】入口広場から西側台地に出る。

 グリーンが今日刈ったところを見ると、確かに点々と雑草が根本から枯れている場所がある。

 グリーンと一緒に枯れている場所を追いかけていくと、魔王城の裏の井戸に到着。


「この井戸から何か出てるのかな? どう思うよジェット嬢」

「アンタ、見て分からない?」


「ジェット嬢は分かるのか?」

「コレ、アンタの足跡よ。足跡のところだけ雑草が枯れてるわ」

「あっ!」


 そう言われると、確かにビッグマッチョな今の俺の足跡だ。

 大きさや歩幅が大きすぎて人間の足跡には見えなかったけど、今の俺の足と俺の歩幅と合致する。そして、【魔王城】入口広場とこの井戸の間はジェット嬢との散歩コースだ。よく歩く場所だ。


 これは間違いなく俺の足跡だ。


「国宝破壊、大砲暴発、魔導砲暴発、戦車暴走の次は雑草枯らしなの? でも、今回はわりと無難ね」

「【魔王】様の特殊能力でしょうか。それなら、草刈り手伝ってくれるとありがたいんですが」

「それができるなら確かに【魔王】っぽいけど、そんな能力は無いぞ。草が枯れる魔法なんてないだろう。それに草が枯れているのはここだけで、他に歩き回った場所は枯れてないぞ」


「最近能力に目覚めたとかかしら?」

「最近か……。ヴァルハラ川に向かう散歩ルートの草は枯れていないから、最期に川に行った時にはその能力は無かったと」


 俺はこの世界に転生した当初は【転生】ではなく【憑依ひょうい】である可能性を考慮していた。

 だから【滅殺案件】の真相を知るまでは、この身体が俺の知らない間に動いて何かしていないかを常に警戒していた。

 その頃の癖で自分の過去の行動は結構意識して記憶している。


「最後に川に行ったのは、十三日前。それ以降で何か変わったことと言えば、【新婚旅行】に行ったぐらいか」

「そういえば、【新婚旅行】から帰ってきてからは【魔王城】の中で過ごすことが多かったわね。運んでもらった荷物の整理とかで」

「そうだな。俺も部屋で久々にいろんな機械のスケッチ描いたな。それに最近は生協さんの配送頻度が上がったから【買い出し】も行ってないな」


 【新婚旅行】のちょっと前あたりに、生協さんに【魔王城】担当の外商部隊が編成されてサービスレベルが向上したのだ。

 配送頻度も高くなり品揃えも充実したと、厨房担当のアンとメイが大喜びしていた。


「【新婚旅行】以降で、俺の足跡だけ草が枯れるか……」


 【魔王】の出す【瘴気しょうき】で生物が死滅するとか、前世世界のファンタジー作品ではありがちな設定だったが、この世界で【魔王】呼ばわりされた俺は魔法とか使えない普通のビッグマッチョな人間だ。


 異世界転生者が【魔王】になる謎ルールを察して、同郷の【副魔王】ウラジィさんと一緒にちゃっかり【魔王城】を貰っちゃったりしたけど、俺自身に【魔王】らしい能力は無い。


 そもそも、実は【魔王】が何なのかもよくわかってない。

 でも、草を枯らせるのが仕事ではないと思う。


 いや、ファンタスティック発想を一旦止めて、普通に考えよう。

 普通に考えたら簡単なことだ。


 俺のくつに草を枯らせるような何かが付いていただけと、そしてそれは【新婚旅行】で行った先に付いたと。

 エスタンシア帝国北部に降りた時に、【鉱毒】らしきもので汚染された山を歩き回ったんだからむしろその可能性が高い。


「【新婚旅行】で歩き回ったあの山で俺のくつに何か有毒物質が付着したのかもしれん。量は多くないはずだが、ここで拡散させるのはマズイ。グリーンよ、草が枯れたあたりの土を集めてバケツか何かに隔離してくれ」

「了解です。だとしたら、【魔王】様の靴も変えたほうがいいですね。予備の靴が医務室にあります。持ってくるのでしばらくここで待っていてください」


「すまん。頼む。今履いている靴もバケツか何かに隔離しておこう」

「でもなんでアンタのくつだけなの?」


「…………」


 俺とグリーンはツッコミどころを見失って黙る。

 ジェット嬢よ。そのボケは扱いが難しいぞ。


 ちなみに。【女性の靴】というのは扱いに注意が必要だ。

 靴が大きいと思ったときに言ってはいけない事がある。

 前世世界の単位で言うところの【25.0cm】が閾値だ。

 【24.5cm】をギリギリで履いている女性に対して【男物のほうが選べるんじゃないか】というのは絶対に言ってはいけない。


 俺は前世にて、それで妹を激怒させ、後に妻を激怒させた。

 性懲りもなく二人も怒らせているのが【ダメ発言癖】だ。

 だが、今のジェット嬢についてはこの問題は発生しない。


「……ゴメン。当たり前よね……」


 脚の無いジェット嬢はくつを履けない。

 【二連装ジェット☆バズーカ】用のノズル部品はくつと呼んでいたが、歩くためのものではない。あれは【蹴る】ためのものだ。

 歩けないジェット嬢は地上を移動するときは俺の背中に張り付く。今でもそうだし、【新婚旅行】の時もそうだった。


 だから、ジェット嬢の足跡はどこにもない。


「できるなら、どんな成分が植物を枯らしているのか調べたいな。そういうことができる組織や人物に心当たりは無いか」

「そういうことが得意な人に心当たりがあるわ。次にキャスリンが来た時に頼んでみましょう。近いうちに来るって言ってたし」


「キャスリンの知り合いか。キャスリンは何気に頼もしいな」

「……アンタも知ってる人よ」


 誰だろう。オリバーかな。

 農夫だし、いろんな作物の栽培に詳しいってフォードも言ってたし。


 グリーンに頼んで、草が枯れた部分の土と俺のくつをバケツに入れて隔離した。

 次にキャスリンが来た時に、分析サンプルとしてコレを渡して原因を確認してもらおう。


◇◇◇


 俺が【草を枯らせる魔王】にされかけた三日後の午後。ジェット嬢を背負って【魔王城】周辺を散歩していたら、南の空から【双発葉巻号】が飛来したのが見えた。


「到着したみたいね。私は部屋に居るから車いすのところまでお願い」

「了解だ」


 足早に【魔王城】に帰る俺達。

 今日は有害物等に詳しい専門家の方を招いているのだ。

 誰だかよく分からないが【魔王城】メンバーが全員知っている人物らしい。


 遊びに来たキャスリンに土やくつを分析試料として引き渡したのが昨日。【試作2号機】では運べなかったので、【双発葉巻号】に搭載して首都に運んでもらった。


 分析試料引き渡しついでに専門家も連れてくるということで、【双発葉巻号】は昨日から首都で待機。


 そして、今帰ってきたところだ。

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