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11-3 免停解除と王妃様の暴走(2.4k)

 俺達がちょっとした【新婚旅行】から帰ってから十日後の午前中。レッドは首都勤務中で不在。アンとメイは調理場で昼食準備、【辛辣しんらつ長】は地下一階の執務室で今日も事務処理。


 そんな通常進行の【魔王城】で、ジェット嬢とエントランスにある座敷でエスタンシア帝国の地図を見ていたら、久しぶりに珍しく来客。


 修理したばかりの入口ドアの通用口を開けて入ってきたのはキャスリンだった。いつものデタラメコーディネイトでフラッと現れた。


「ごめんくださーい」

「いらっしゃいませー」


 そして今日も飲食店風に応える俺とジェット嬢。


 キャスリンは何かうれしそうだ。歌を口ずさみながら小躍りしながら俺達の居る座敷に向かってくる。あの歌はいつぞやの【スペシャルギロチン@品質管理ソング★死刑!!】だ。

 何かイイ事があったんだろうか。


 俺とジェット嬢とキャスリンが座敷の上でちゃぶ台を囲むと、メイが三人分のコーヒーとクッキーを用意してくれた。


「【免停】期間が終了しましたの」


 キャスリンが嬉しそうに話を切り出す。

 そして、ウェストポーチからカードのようなものを出した。


「そして、新しく制度化された【免許証】も発行されましたの」


 トラクターの免許制度の話は聞いていたけど、ついに飛行機の免許制度もできたのか。

 でも、【写真機】は広く普及していないから、免許証にあるのは顔写真じゃなくて似顔絵だな。

 なんか免許証の玩具おもちゃみたいだな。そして、えらくたくさん文字が書いてあるように見えるが、俺にはその文字が読めない。


「えーと、【小型機種限定】【乗客人数限定】【国内限定】【速度限定】【高度限定】【旋回荷重限定】…………。随分たくさん限定付けられたのね」


 ジェット嬢が読んでくれた。たくさん書いてある文字は限定の条件だったか。旋回荷重とか、免許証に書くことではないと思うが。


「いいんですの。飛べるだけでもありがたいのです。旦那との必死の交渉で勝ち取った大切な免許証ですわ」

「まぁ、再び飛べるようになって良かったな。もう【免停】にならないように気を付けるんだぞ」

「次やらかしたら【免許取消】だと旦那に脅されているので気を付けますわ」


 ブルーの【免許証】も持ってきてくれたので受け取った。今は【双発葉巻号】で外出中なので帰ってきたら渡そう。今日は首都に行っているはずだ。


 【新婚旅行】から帰って以来、陸上突撃機【双発葉巻号】は輸送任務で大活躍していた。【門出かどで】の際にサロンフランクフルト食堂棟二階の四号室に残してきたジェット嬢の荷物の残りを運んできてもらったり、【バー・ワリャーグ】にレッドの給料を運んでもらったり、そのついでにアンとイエローとブラックが首都に買い出しに行ったりと。

 【魔王城】の荷物輸送とメンバー移動の手段として活用されている。


 ジェット嬢によると、ブルーの【免許証】には【免許皆伝】と書いてあったそうだが、まぁ気にするまい。

 コーヒーを飲んで、クッキーを食べる。キャスリンが再び話を切り出す。


「あと、頂いた泥のサンプルの分析結果を持ってきましたわ」


 キャスリンがウェストポーチから紙を数枚取り出してジェット嬢に渡す。俺も読みたいけど俺にはやっぱり読めない。


「やっぱりあの泥は有毒なのね。でも、金属含有量が随分多いじゃない。金も含まれてるわ」

「鉱山技術者の方にも確認しましたが、この泥自体が資源として価値があるそうですの」


「だとしたら、鉱山に関連する技術はユグドラシル王国の方が進んでるのか? 意外だな」

「国内の金属鉱山は枯渇しかかっており品位の高い鉱石が乏しいのです。ですから、そこから金属資源をとことん回収する技術だけは進んでいますわ。でもその分なにもかも高価ですの。鉄や銅の価格でいうと、エスタンシア帝国の六倍ぐらいになってますわ」


 なんか共感できるな。

 資源が乏しいからこそ技術が進歩するというパターンか。俺の前世の出身国でもそんな部分はあった。エネルギー資源が自給できないから、省エネ技術が進んだりとか。


「この分析結果を通じて、エスタンシア帝国の北部鉱山には品位の高い鉱石がありそうと考えた鉱山技術者達が、【掘らせろ】とか大騒ぎしてなんか変な詩のようなものを作りましたの」


 キャスリンが出したメモ書きをジェット嬢が読む。



 ●鉱山野郎の叫び

 作:ユグドラシル王国南部鉱山採掘技術班


 昨日、鉱山の坑道こうどう行ったんです。坑道こうどう

 そしたらなんかいい鉱石ほとんど無くて採掘できないんです。

 で、よく見たらなんか地下水わいてきていて、水脈近い、とか伝言板に書いてあるんです。

 もうね、ダメかと。ここもかと。

 お前らな、坑内掘りで普段見当たらないような地下水脈掘り当ててるんじゃねーよ、ドジが。

 地下水だよ、地下水。

 なんかどんどん坑道こうどうに水入って来るし。上からも下からもかよ。あぶねーな。

 うわー排水装置故障中ですー、とか相方が言い出すの。もう掘ってらんない。

 お前らな、地下水抜けないから全員逃げろと。

 坑内掘りってのはな、入坑にゅうこうするだけで命懸けなんだよ。

 上の坑道こうどうで地下水脈掘り当てた奴が居たら、下の坑道こうどうに居る奴が溺死してもおかしくない。

 生きるか死ぬか、そんな瀬戸際で安全第一語るのがいいんじゃねーか。地下水脈掘り当てて報告もせずに放置した奴はすっこんでろ。

 で、やっと上層階まで登ったと思ったら、隣の班が一人居ませんとか言ってるんです。そこで俺ブチキレですよ。

 あのな、入坑にゅうこう前に毎回班で点呼しろっつってんだろうが。ドジが。

 得意げな顔して何が、今日は彼は欠勤でした、だ。

 お前は本当に安全第一を理解しているのかと問いたい。問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。

 お前、安全第一って口だけちゃうんかと。

 鉱山歴長い俺から言わせてもらえば今、この国の鉱山の間での問題点はやっぱり、鉱石の枯渇、これだね。

 掘れるところは掘りつくして。もう鉱石残ってない。

 枯渇っていうのは絶望的な問題点。掘り方変えるぐらいじゃどうにもならない。これ。

 で、やむなく坑道深度上げる。これ最強。

 しかしこれをすると、事故が起きた場合の避難が難しくなる危険を伴う、諸刃の剣。

 今の技術ではお薦めできない。

 まあ俺達採掘屋は、隣国の鉱山を制圧して掘らせてもらうしかないってこった。



「何なのコレ……」

「また何かの【電波】が影響してそうな気がするな。末尾に不適切な表現が含まれているが、この作者たちどうなったんだ?」


「頭を冷やしてもらうために【外患誘致未遂罪】で投獄しましたわ」

「鉱山地区にもどうしようもない【クレイジーエンジニア】が居たのね」


「でも、気持ちは分からなくは無いんですの。私は立場的にあんまり物騒なことは言えないのですが、ここのところの経済成長で金属材料の需要は高まっているのに、ユグドラシル王国南部の鉱山は枯渇しつつあり。金属資源の再利用は進めていますが、絶対的な需要の増加に応えることは難しく。そこで、あちらの国に質のいい鉱脈があって、雑な製錬で資源を無駄にして山を汚すような掘り方されてるなら、いっそまるっと侵略してこちらの領土にしてしまいたいと」


「【問題発言】ですよ【王妃】様!」


 暴走しかかったキャスリン王妃の【立場的にマジで危ない問題発言】に対してしっかりと説教。近々また来ると言いつつキャスリンは【試作2号機】で帰って行った。


 王妃様は暇なのかな。


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