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10-6 空から落とされる系魔王(2.2k)

 キャスリンと座敷でしばし雑談したのち、弁当等の遠足セットを準備してから陸上突撃機【双発葉巻号】にて出発。搭乗は【機長】のブルー、撮影係のキャスリン、そして俺とジェット嬢。


 飛行することおよそ二時間。

 現在、エスタンシア帝国北部平野上空約2000m。

 【航空写真】撮影のため高揚力装置を使って低速飛行中。


 貨物室にて俺用の椅子に座ってラクチンな空の旅を楽しむ俺。

 やっぱり機内に居たほうが楽だし、巡航速度も速いので時間も短縮できる。

 確かに遠出する時には便利だ。


「依頼された【航空写真】の撮影は終わりましたわ」


 操縦室区画が出てきたキャスリンが報告。


 では俺もそろそろ降りるか。

 その前に、ジェット嬢を【着艦】させないとな。


 ジェット嬢は今俺の背中に居ない。

 この【双発葉巻号】の脇を単独飛行で飛んでいる。


 【航空写真】撮影スポットに到着したら我慢ができなくなったらしく、一人で飛びたいと言い出した。


 【双発葉巻号】には、備品としてジェット嬢単独飛行用の投下機材【ジェット☆シューター】が装備されているので、それの試験も兼ねてジェット嬢は単独飛行で投下口から機外に【発艦】。


 【ジェット☆シューター】とは、長さ3m程度の滑り台のような装置で、機内貨物室からジェット嬢が機外に安全に滑り降りるためのものだ。


 ちなみに、ジェット嬢は単独飛行だと両腕が自由に使えない。飛行中に何かを掴もうとして腕を動かすと空気抵抗と重心位置が変わることで姿勢が崩れてしまい、掴もうとしたものに衝突する危険がある。

 あと、魔力推進脚の推進噴流がスカートに当たると破れてしまうので、飛行姿勢に合わせて両手でスカートを持っていないといけないとか。


 魔力推進脚自体も低出力領域での推力制御が難しいため、自重が軽くなりすぎる単独飛行は見た目ほど自由ではないそうだ。逆に、重い俺を背負っていたほうが飛行自体は安定するらしい。


 だったら単独飛行時の【双発葉巻号】への【着艦】はどうするかというと、【ジェット☆タモネット】という、ジェット嬢がすっぽり入る大きなタモあみを使う。

 機体下を飛ぶジェット嬢を俺がその網を使って投下口からすくい上げる形だ。


 ジェット嬢は単独飛行だと着陸ができないので、ここで降りるには一旦【着艦】させて、俺が背中に背負った後で再度投下口から【発艦】する必要がある。

 飛んでいる飛行機から飛び降りるのは正直怖いが、ジェット嬢を背負った状態なら問題は無いだろう。


 ジェット嬢の【着艦】準備のため、貨物室の壁に固定してある【ジェット☆タモネット】を取ろうと、頭上に気を付けながら立ち上がる。


『着艦面倒だからそこから飛んで頂戴。空中でキャッチするわ』


 ジェット嬢のよく通る声で無茶ぶりが聞こえた。

 同時に背筋が凍る。

 マジか。


「Bパーツ、投下用意!」

「俺はロボット部品じゃねぇ!」


 操縦しながら楽しそうに号令をかけるブルーに決死のツッコミ。


 しかし、容赦なく床下の投下扉が開き、貨物室内に風が吹き込む。


「訓練通りにすれば大丈夫ですわ」 カチャリ


 キャスリンが楽しそうに俺の転落防止用ワイヤーを外す。


「訓練してないから! 訓練以前に、コレ想定もしてないから!」


 当たり前のように危険なことをされてツッコミ入れるもスルーされる俺。


「遠足セットを忘れずに装着してくださいな」


 危機感を感じつつも、差し出された前持ちリュックサックを装着する俺。


 背中にはジェット嬢を背負うので、荷物を多めに持つときは俺用の前持ちリュックサックを使う。

 ビッグマッチョの俺に合わせて作ってあるので、食料とかがたくさん入るお気に入りのアイテムだ。


 投下口の前に立ち下を見る。

 ジェット嬢が機体の遙か下を飛んでいるのが見える。


「この機を見た時に、なんとなくコレをさせられるんじゃないかと思ってはいた。だけど、まさか、最初からやらされるとは思ってなかった……」


「本日は【双発葉巻号】をご利用頂きましてありがとうございました。次の搭乗をお待ちしています。つべこべ言わずに【新婚旅行】行ってらっしゃいませー」


 バサッ


 背中に感じる衝撃と同時に、機内貨物室から投下口に吸い込まれる俺。飛行機から生身で落とされるというあんまりな扱いを受けて逆に冷静になってしまう。


 【空から落とされる系の魔王】爆誕。

 需要無い。コレ絶対に需要無い。


 頭を下にして自由落下する俺に向かって飛んでくるジェット嬢。


「餌に向かってくる肉食魚みたいダナー」


 どうせなんもできないしとなかばヤケクソで感想。


 そういえば、ジェット嬢は単独飛行だと両腕が自由に使えない。

 落下する俺をどうやってキャッチするつもりだろうか。

 一度は掴まないと、背中の金具の連結はできないようにも思うが。


 落下しつつも、背後にジェット嬢が近づいた気配。


 ガブッ



・魔王歴83年7月15日


 王城再建の【竣工式】と同時に、国王ワフリート・ソド・ユグドラシルの退位と第二王子イェーガ・ゾル・ユグドラシルの即位が発表された。

 王宮襲撃事件の引責という側面もあったが、イェーガ第二王子のインフラ設計と経済政策の実績を各地領主から認められた結果ともいえる。


 しかし、未曽有の国難の中での即位でもあった。

 国庫は借金漬けで、外交は不信感を持たれたまま。

 技術の進歩と急激な経済成長はその陰で多くのひずみを生みつつあった。


 そして何より、動き出した【魔王城】の存在……。

●次号予告(笑)●


 未曽有の国難の中即位したイェーガ王。インフラ設計や経済政策の手腕が評価されているが、彼の本来の特技は【イレギュラー対応能力】。

 事前に発生し得るトラブルを予測し備える能力。トラブル発生時の迅速な初動や機敏な軌道修正の指揮をする能力。自分が動けなくなった場合に備えて代役を務められる人間を適所に配置する能力。

 鍛え抜かれたそれらの能力が今までの成果を生み出してきた。

 その能力を鍛えたのは突発暴挙癖のある妻キャスリン。

 幼馴染でもあり付き合いは長かった。

 その分苦労も多かった。


 がんばれイェーガ。負けるなイェーガ。

 胃痛の主要因でもある突発暴挙癖持ちのキャスリン王妃が、国難の主要因への一次対応をがんばっているぞ。


 エスタンシア帝国北部平野上空2000mより投下された【魔王】。

 この世界では【新婚旅行】も命懸け。


 なにはともあれ、目的地に着陸成功。

 戦争の発端の一因となった、エスタンシア帝国北部穀倉地帯の不作。

 現場の状況と前世で得た知識より、男は原因を推測する。


次号:クレイジーエンジニアと公害の恐怖

(ゴエイジャーの活躍が入るかも)

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