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10-2 キャスリン来訪と山陽道の行方(2.6k)

 俺が【結婚式】による黒焦げから復活した翌日午前中。

 アンとメイは調理場で昼食準備、【辛辣しんらつ長】は地下一階の執務室で事務処理、レッドは滑走路の掃除、グリーンは台地の草刈り、ブルー、イエロー、ブラックは外出。


 そんな通常進行の【魔王城】で、ジェット嬢とエントランスにある座敷のちゃぶ台でくつろいでいたら、珍しく来客。


 空きっぱなしの入口ドアから入ってきたのはキャスリンだった。いつものデタラメコーディネイトでフラッと現れた。

 今日はちょっと大きめのかばんも持っている。


「ごめんくださーい」

「いらっしゃいませー」


 やっぱり飲食店風に応える俺とジェット嬢。


 俺とジェット嬢とキャスリンが座敷の上でちゃぶ台を囲むと、アンが三人分のコーヒーを淹れてくれた。それを頂いて一服したのち、キャスリンはちゃぶ台上に地図を広げて話を切り出した。


「ちょっと二人に【魔王城】周辺の道路整備について相談に来ましたの」


 俺は未だにこの世界の文字を読み書きできない。だが、図は読める。

 キャスリンが広げた地図は【魔王城】周辺の地図じゃない。

 ユグドラシル王国全土の道路地図だ。


「国土西側の幹線道路となる【山陽道】の経路についてですが、【魔王城】を終点とする案と、南側で迂回してリバーサイドシティ側につなげる案がありますが、どちらがよいでしょうか」


 いや、それ国全体の道路インフラ設計の話だよな。

 俺達に聞く話じゃないよな。


「【魔王城】周辺はあんまりにぎやかにしたくないから、南側の街のあたりで東に曲げてヨセフタウンの方につなげて欲しいわ」

「わかりましたわ。ヨセフタウンにつなげるなら【中央道】と【東海道】と一点で合流させた方がよさそうですわね」

「そうね。そのへんはお任せするわ」


 ジェット嬢よ。当たり前のように国内交通インフラ設計の指示を出しているが、いつの間にそういう立ち位置になったんだ?

 なんか【都市開発シミュレーションゲーム】みたいだぞ。


 キャスリンはジェット嬢の指示に従って地図に道路を示す線を追記していったが、その描き方が気になった。

 直線部分も波打つような経路にして、西から東へ向かう部分は東西方向に走らないようにジグザグに引いている。

 俺の前世世界の道路設計のノウハウが入っているようにも見えたので、ちょっと聞いてみることにした。


「首都には道路設計の専門家が居るのか?」

「研究している部署もありますし、ウラジィさんにもアドバイザーとして協力頂いています」


「じゃぁ、道路インフラだけでなく、交通ルールとか法整備とかも進んでるのか?」

「はい。制限速度や交通標識や免許制度等もウラジィさんの知見を元に整備中ですの。件数は少ないですが【交通事故】も発生しているので急務ですわ」


 ウラジィさんもこの世界のために色々がんばってるんだな。


「ただ、ウラジィさんについては少々困ったことがありまして」

「どうした。歳だから体調が悪いとかか」


「【コメディアンを王にしてはいけない】と各方面で力説するんですの。旦那はコメディアンではないので、王位継承権について何か言いたいわけではなさそうなのですが、ちょっと意味が分からなくて困っていますわ」


 イェーガ王子とキャスリンならコメディアン夫婦としてもやっていけそうな気はするが、ウラジィさんの言いたいところは多分そこじゃない。


「それはウラジィさんの前世での【私怨しえん】だから、あんまり気にしなくていいぞ」


 道路インフラの話は一段落。

 キャスリンが地図をかばんに片づけて、三人でちょっと冷めたコーヒーを飲む。


 アンがビスケットとコーヒーのおかわりを持ってきてくれた。

 まるでメイドみたいだ。いや、メイドだったな。

 いや、そもそもメイドって何なのか俺よく知らないけど。


 キャスリンが持ってきた大きなかばんを見て、ふと思ったので聞いてみる。


「そのかばんは【試作2号機】に載るのか?」

「載りませんわ。だから今日は【軍用1号機】で連れてきてもらいましたの」

「珍しいわね。キャスリンが自分で操縦しないなんて」


「諸事情によりまた【免停】になってしまいましたの……」


 キャスリンが寂しそうに応えた。

 何をしたんだ一体。


「ところで、あの飛行機はいつ頃到着予定かしら。艤装ぎそうの割には時間がかかっているように思うわ。早めに使いたいんだけど」


「…………」


 気まずそうに黙るキャスリン。


「あの日、【悲鳴】がここまで聞こえたんだけど。まさか、壊してないわよね」


 追及するジェット嬢。


 サングラスの上からでも分かる。

 キャスリンの目が泳いでる。

 そして見覚えのあるオーラが出てきた。


 あのオーラは俺の前世世界で見た覚えがある。

 【真冬の夜に会社から帰宅する時に自動車のフロントガラスが凍結してたけど横着してそのまま走り出したら、右折で大通りに出ようとした時に正面にあるラーメン屋の照明が氷に反射して前が見えなくなったことでハンドル操作を誤り中央分離帯に乗り上げる形で衝突、修理工場にレッカーで運んでもらったらエンジンルームが下からえぐられてると全損判定もらって、途方にくれながらやむなく徒歩で帰宅したら旦那が先に帰っていて車どうしたのと聞かれた時】

 のオーラだ。


「正直に言ったほうがいいと思うぞ」


「申し訳ありません。修理中ですわ」

「修理内容を教えて頂戴」


主翼翼桁しゅよくよくけた全交換ですわ」

「大修理ね。それで、工期の予定は?」


「あと十日ぐらいと聞いてますわ……」

「……到着したらエスタンシア帝国側も飛びたいから、あっち側の入国許可と上空飛行許可も取っておいて頂戴」


「準備しておきますわ」


 次期王妃であるキャスリンをパシリにするジェット嬢。

 【滅殺案件】によるとジェット嬢もかつては次期王妃だったそうだが、今のこの二人の関係性がよく分からん。


 そして、休戦中とはいえ敵国であるエスタンシア帝国。その上空飛行許可なんてそう簡単に取れるとは思えんが、そんなにあっさり引き受けてどうするつもりだキャスリン。


 他にもいろいろ情報交換をした後で、キャスリンは席を立った。【山陽道】の建設予定地を視察しながら陸路で首都まで帰るという。そのついでに帰省もするとか。

 街の外の一人旅は危ないので、最寄りの街まで【辛辣しんらつ長】に護衛役として同行してもらうことにした。

 そして、【辛辣しんらつ長】には街に行くついでに新しい車いすの手配も頼んだ。


…………


 【辛辣しんらつ長】とキャスリンを見送った後の昼食時。ゴエイジャーのレッドとグリーンがしょんぼりしていた。


「ゴエイジャーなのに護衛役に呼ばれなかった……」


 そういえば、そうだな。

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