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9-2 魔王的結婚論 お互いに必要とし合えること(2.0k)

 無思慮な一言で世界を滅亡の危機に陥れてしまった、買い物帰りの午後。

 機銃掃射で滅茶苦茶になった林の中に一人取り残されてしまった。


 俺は、一択の選択を前にしばし考える。


 選択の余地が一択の選択だとしても、それをしっかりと自分の意思で【選ぶ】のはとても大切なことだ。

 特に、その選択に他人を巻き込む場合は。


 何も考えずに【仕方ないから来ました】なんて姿勢でノコノコと【魔王城】に行ったら、この【地球】を真っ二つにされるかもしれん。

 どっちが【魔王】だよ。本当に。


【結婚】


 既婚者の肩書とは死別しているので、再婚にはならない。

 しかし、俺は40代のオッサン。どちらかというとジェット嬢は【娘】に近い。まぁ、前世の俺は結婚が遅かったから息子は小さかったけど、結婚が早ければ40代であのぐらいの【娘】が居てもおかしくない。


 だから、ジェット嬢を【女】として見れるか、【女】して愛せるかというと正直答えは出ない。


 でも、【条件】は理想的なぐらい満たしている。


 【結婚の条件】は、年齢とか、お互いの恋愛感情とか、家同士の都合とか、そういう物じゃない。もっとシンプルなものだ。


【お互い必要とし合えること】


 前世世界ではこれを理解してない若造が、結婚と恋愛を結び付けて勘違いし、結局別れるようなことが多かった。

 また、結婚後の生活もこの条件を満たし続けていないと成立しない。条件を満たさなくなると、破局する。定年退職を機に熟年離婚するのも結局そこが原因だ。


 俺とジェット嬢は、この【条件】を満たしている。


 俺はジェット嬢が必要だ。

 俺は自分の身を守る手段が無い。ビッグマッチョではあるが戦闘センスは皆無。逃げることは得意だけど、逃げ切れなかったら戦えない。

 剣を持った兵士複数名に追いつめられたら詰んでしまう。銃とか出てきたらなおさら絶望的だ。


 命を狙われる理由があるかどうかは未知数だ。だが、何処へ行ってもやたら目立つこのビッグマッチョボディの元の持ち主は、この国の第一王子。

 人物像は分からないが、【魔王討伐計画】の最高責任者で、エスタンシア帝国との外交も取り仕切っていた人物だ。


 【死亡】が正式に発表されたので街中で人違いされることは無くなったが、何処に【敵】が居るか分からない。


 転生してから一年以上それを意識せずに無事で居られたのは、ジェット嬢の影響力によるものだ。

 俺はジェット嬢を背負う以外に身を守る手段が無い。


 ジェット嬢も俺を必要としている。

 単独で離陸したジェット嬢を安全に着陸させることができるのは俺だけだ。

 そして、両脚の無いジェット嬢は俺が居ないと地上を移動することができない。

 車いすはあるが、ソリッドタイヤの車いすでは行動範囲は限られる。

 ジェット嬢一人では生活がすごく不便だ。


 俺が数日居なかっただけでも、動いている俺を見つけるなり散歩をおねだりするぐらいに退屈してしまう。


 また、移動手段として以外にも俺の背中に執着があるようにも思う。

 ジェット嬢は俺を【人間】じゃなくて、移動手段とか降着装置とか道具とかそんな風に見ている感は確かにある。


 しかし、今の俺にとってそれは小さなことだ、必要とされるなら、どんな扱いだってかまわない。


 そもそも、俺の前世世界では【既婚男性】は人間扱いなんてされてなかった。


 働いて稼いだお金を家族に捧げたうえで、疲れて仕事から帰っても休むことは許されず妻の指揮下で家事育児に忙殺される。

 趣味を持つことも許されず、家事育児に従事する時以外は家庭内に居場所すらない。だが、そんな生き方こそが男の美徳だと。


 前世で若かった頃に、当時40代ぐらいだった会社の先輩方からそんな悲痛な叫びをたくさん聞いた。

 そして、俺が実際に結婚して40代のオッサンになった時に思った。


 先輩方それちょっと言いすぎ。


 まぁ、それはいい。

 多少扱いが雑だったとしても、俺はジェット嬢を背負うことで、この異世界で一番安全な居場所が得られる。

 そして、前世世界の既婚男性よりも自由度の高い形で楽しくここで生きることができる。


 選択は決まった。さて、行くか。


 買い物袋を持って、林を進む。飛んだらすぐだけど、歩くとけっこう遠い。


 前世で40代オッサンだった俺がこんな葛藤かっとうや決断と無縁だったのは、前世で全くモテなかったからだ。


 前世の妻とはお見合い結婚だった。

 結婚前に他の女性と交際なんてしたことはなかった。

 まぁ、技術者の人生なんてそんなもんだ。


 そんな俺が【逃げたら世界を滅ぼす】とか脅しが出るぐらいに求められているんだから、【男冥利に尽きるぜ】と叫びながら全速力で【魔王城】に迎えに行って抱きしめてやれよという話かもしれん。

 まぁ、俺ももう少し若ければそれができたのかもしれん。


 でも俺はやっぱり40代のオッサン。一度死んでもそこはリセットされてない。【結婚】っていうのは、愛とか情熱じゃないんだ、覚悟とか責任とか見通しなんだよ。


 だから、歩いて行く。

 走れば速いんだけど、歩いて行く。


 歳を取ると人間いろいろめんどうくさくなるものだ。

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