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8-3 双発葉巻号 俺を投下するための飛行機(2.1k)

 【魔王城】近くの滑走路に突如現れた、この世界初の大型航空機【双発葉巻号】。

 強奪してきたキャスリンの案内で機の中を確認する。


 機体出入口は俺の予測通り機体左側面にあった。

 そして、ブルーが既に乗り込んで操縦席で取扱説明書を読んでいた。


ミシッ ミシッ ミシッ


 搭乗口から機内に入り、後部の貨物室を歩く。

 機内を俺が歩くたびに機が揺れて床板から軋むような音がするが、床板が歪んだり凹んだりはしない。体重が常人の二倍以上で、ジェット嬢を背負うと三倍ぐらいになるビッグマッチョの俺が機内を歩ける。


 この世界でいろんな乗り物を見てきたが、俺が乗れる物は少なかったのでちょっと嬉しい。


「大型機なだけあって中は広いな。かがんた状態とはいえ、ジェット嬢を背負った俺が中で動ける」

「床は気を付けてくださいね。【魔王】様の体重に耐えられる床板は緑色の部分だけですわ。他の部分を踏むと踏み抜いてしまう危険性がありますの。あと、貨物室中央の床の開口部には気を付けてくださいまし」


「俺の体重を考慮して作ってあるのか。まるで俺達を乗せるために作ったような機体だな。まぁ、俺達は自力で飛べるから飛行機が必要かどうかは微妙だが」

「あら、私はこの飛行機欲しいわ」


 俺の背中に乗るジェット嬢が意外な一言。


「そうなのか。意外だな」

「【カッコ悪い飛び方】はスピード出せないし疲れるでしょ。それにあんまり荷物も持てないし。この大きな機体で【試作2号機】の三倍の巡航速度が出せるのは魅力だわ」


「確かに【カッコ悪い飛び方】は推力に余裕あってもほぼ生身で飛ぶ分【試作2号機】よりも遅いからな。だが、この機だと離着陸できる場所が限られるぞ」

「そこは確かに問題ね。今降りられるのはサロンフランクフルト以外ではここと首都ぐらいかしら」


「目的地上空で飛び降りれば良いのですわ」


 操縦室からキャスリンがしれっととんでもないことを言い出した。


「はっはっはっ。御冗談をお姫様」


 面白い冗談なので笑って返す俺。


 笑いつつも、俺は前世世界のこの機がどんな飛行機だったかを知っている。

 そして、貨物室中央の床に前後方向に空いている大きな開口部と、その下に見える扉がどういう物かも知っている。


「ブルー。投下扉解放ですわ」

「了解」 ガシャッ


 床下から響く電動機の音。

 そして、貨物室床の開口部の下に見える扉が開いて地面が見える。

 やっぱりそこが開くのか。


「何? 見たい。見たい」


 俺の背中でジェット嬢が騒ぐので、貨物室前端の操縦室入口あたりで前を向いてしゃがんでみる。

 こうすればジェット嬢にも貨物室全体が見えるだろう。


「おー。ファンタスティーック。これは面白いわね」


 ジェット嬢は気に入ったようだ。


 【深竜】や【連竜】もそうだったが、この機の元になった機体も前世世界では軍用機だった。

 【陸上攻撃機りくじょうこうげきき】又は【雷撃機らいげきき】と呼ばれたもので、敵の上空から爆弾や魚雷を投下するための飛行機だった。


 床の扉は元は魚雷や爆弾を投下するための構造だ。


 だが、この世界では航空機を兵器として使用していない。魚雷や爆弾を投下する必要は無い。

 だったら、この投下扉は何を投下するためのものか。


 【俺達】を投下するためのものだ。


 マジか。


「ちなみにお姫様。この機の構造の発案者はどちらさまでございましょうか。あと、この機は一体何なんでしょうか」


 あんまりな設計を目の当たりにして、ついキャスリンに敬語で確認をとってしまう。


「設計主担当はウェーバ社長ですわ。この機の開発名は、陸上突撃機【双発葉巻号】。愛称は【ベティー】ですの」

「ウェーバぁぁぁぁぁぁ!」


 この俺を空から落とすための飛行機。

 何の恨みがあってそんなものを作るんだ!


「やればできるじゃない。この機、【魔王城】で買うわ」

「おい! 本当に飛行機から飛び降りるつもりか!」


「遠出するとき便利でしょ」

「片道になるぞ。帰りはどうする」


「片道だけでも十分よ。帰りはいつも通り飛べばいいじゃない」


 そこで操縦室からキャスリンが一言。


「往復も可能ですわよ。飛行中にこの扉から乗り込めば良いのです。それ用の機材も準備中ですわ」

「あ、なるほど。なんかできそうな気がするわ」


 空中空母かよ。


 陸上突撃機【双発葉巻号】は【魔王城】の備品として購入することが決定。

 【乗機】を欲しがっていたブルーがこの機の【機長】に任命された。


 未搭載の機材が残っているとのことなので、ブルーの訓練飛行も兼ねて【西方航空機株式会社】に回送することにした。


 その【大口の商談】を終えたキャスリンがなにか見覚えのあるオーラを出している。


 あのオーラは俺の前世世界で見た覚えがある。

【整備下請け会社の一員として一人で客先の機械室に入って機械の点検をしたら、バルブ操作を間違えて機械室を水浸しにしてしまい途方にくれていたところ、遠隔監視装置の警報を見た親会社の整備員さんが駆けつけてきてくれたので、一緒にお客様に謝りに行ってもらおうと思った時】

 のオーラだ。


 強奪してきたから一人で帰るのが怖かったんだな。

 帰ったらウィルバー部長とメアリ様が居るから怖いんだな。

 臨死ブルーを連れ帰ることができて都合が良かったんだな。


 でもまぁ、【大口の商談】をまとめてきたんだから、叱られずに済むんじゃないかな。

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