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6-5 オッカナイ嬢ちゃんと40mm砲の破壊力(2.1k)

 王城区画内の排水処理設備の故障により、城下町で【王宮食フードフェスティバル】が臨時開催されている日。


 出発を予定していた昼食時間になったので、【魔王城】に向けて飛び立つためジェット嬢を背負って【バー・ワリャーグ】の屋上飛行場に来た。

 ウラジィさんも見送りに来てくれた。


 相変わらず城下町はお祭り騒ぎ。

 美味しそうな食べ物の臭いが屋上まで漂ってくる。

 街を見下ろすといつの間にか屋台まで出ていた。


 ジェット嬢と一緒に行ってみたいけど、今は我慢だ。


 城下町なだけに屋上からは城が良く見える。

 綺麗な城と国のシンボルの塔。


 しばらくここには来ないだろうから、出発前によく見ておこうと塔を眺めていると、ジェット嬢が屋上飛行場の端に何かを見つけたようで、指示を出す。


「あそこに落ちてる金属パイプ一本取って」

「了解だ」


 バリアフリー工事で使った材料の余り。

 外径40長さ1m程度の金属パイプが数本転がっていたので、汚れや錆が少ないものを選んで背中に張り付くジェット嬢に渡す。


「コレでいけるかなー」


 ジェット嬢がよくわからないことをつぶやきながら、俺の背中から金属パイプを城に向ける。

 次の瞬間。


 ガシャーン


 金属パイプ先端から王城区画目掛けてスーパーデンジャラスビーム兵器【魔導砲】が炸裂。

 光弾のようなものが飛んで塔の屋根に命中し、一部が崩れた。


 なんてことを!!


 お祭り騒ぎの街中から驚愕の声と悲鳴が聞こえる。

 そりゃそうだ。国のシンボルの塔がいきなり目の前で攻撃を受けて一部崩壊したんだから、騒ぎにもなる。


 そんなことを気にしているのかどうなのか、ジェット嬢が物騒なことを言い出す。


「コレいいわね。一本もらっていいかしら」

「かまわんよ」


 ウラジィさん! そんな危険物譲るな! 渡したの俺だけど!


「単独飛行で離陸するわ。飛行場中央にお願い。ウラジィさんは遮蔽物に退避」

 何か嫌な予感はするが、まぁ、止めても止まらないだろう。


「アイアイサー」


 俺は飛行場中央の離陸地点に立ち、上半身を垂直にして脚を踏ん張る。ウラジィさんは、離着陸時退避用の遮蔽物に隠れた。

 ジェット嬢が魔力推進脚を始動して足元に激しい流速。背中が軽くなる。


「じゃ、ちょっと王宮に【お礼参り】に行ってくる。すぐ戻るし、戻ったらすぐに出発するからここで待ってて」


 パキン


 いつぞやのように背中の金具が切り離されて、ジェット嬢は垂直姿勢飛行で俺から3mほど離れた後、空高く飛びあがっていった。


 いつぞやと違って、今回は帰還前提の単独離陸。


 ちなみに、離陸を見送るときには重要な作法がある。


 垂直上昇時に見上げてはいけない。

 紳士の心得だ。


 順守じゅんしゅしないと【魔導砲】の雨を浴びることになる。


 金属パイプを持って飛び上がったジェット嬢は【バー・ワリャーグ】上空で何度か旋回したあと、王城区画に向かって飛んで行った。


 それを見届けて、ウラジィさんが退避場所から出て俺の隣に並ぶ。


 ジェット嬢の速度なら、ここから王城区画まではあっという間だ。もう城の上空をジェット嬢が飛び回っているのが見える。

 その光景を見てどうしても話し相手が欲しくなったので、隣に居るウラジィさんに話しかける。


「ウラジィさん。ジェット嬢がなんか、王城区画内を【魔導砲】による航空攻撃で破壊しているように見えるんだが」

「オッカナイ嬢ちゃんだな」


 屋上飛行場から街を見下ろすと、大騒ぎになってる。

 そりゃーそうだ……。


「【魔導砲】で王城区画内の建屋がいくつか崩れたけど、アレの威力ってウラジィさんの知る兵器に当てはめると、どのぐらいかな」

「そうだな。遠目だが、わしの見立てだと、一発の威力は口径40mmの艦載対空機関砲かんさいたいくうきかんほうぐらいか。連射速度もそれに近いな。もっとも、手持ちで撃てるような代物しろものじゃないが」


 大口径の砲弾を秒間4発ぐらいの速度で上空から連射。

 屋根を貫き柱を砕いたのか、砲弾を浴びた建屋は僅か数秒で瓦礫がれきに。


「そうか……。航空兵器に例えるならガンシップ機みたいな感じかな。あ、今度は塔の外壁を粉砕してる」

「野菜の皮むきみたいだな。中身が丸見えにされてるよ」


 砲声と建屋が崩れる轟音が街中に響く。


「ジェット嬢、塔の陰に入って見えないけどまだ撃ってるのかな。あ、また建屋が崩壊した」

「嬢ちゃん激しいな。アレがこの世界の魔法というやつか? あんなことできる奴が沢山居るのか? 物騒な世界だな」


 居てたまるか。戦場に魔法を持ち込まなくて本当に良かった。


「アレができるのはジェット嬢一人だけだ。普通の魔法に興味があるならアンとメイに見せてもらったらいいと思う」

「そうか。それにしても、とんでもない破壊力だな。怪我人出てないといいな」

「まぁ、そこは考えてるんじゃないかな」


 地面が揺れる。

 ジェット嬢が地面を撃ったのか。


 首都中心部の王城区画内はもうめちゃくちゃだ。

 城は原型を留めていない。外壁をはぎ取られて無残な形にされた塔だけが瓦礫がれきの山の中央に【墓標ぼひょう】のように立っている。


 そして、その周辺で散発的に土煙が上がり、そのたびに建屋が消えて、瓦礫がれきの山が増えていく。


 大騒ぎになっている街のあちこちから恐怖の悲鳴が聞こえる。


「ウラジィさん。また後始末頼む」

「……引き受けた。今回も骨が折れそうだ」

●次号予告(笑)●


 首都で【お礼参り】を済ませた二人は【魔王城】へと飛ぶ。

 かつて二人が出会った場所のすぐ近く。そこは、辺鄙へんぴな場所でありながら快適な住処であった。


 【魔王城】を新居とした背中合わせの二人のスローライフ同棲生活。


 即席でバリアフリー工事を行い、生活環境を改善。

 食品は生協さんが配達してくれた保存食と、生鮮食品は近くの村まで飛んで買い物。

 時間ができた時は、城の掃除。


 でも、大きい城なので二人で住むには広すぎる。

 二人暮らしもいいけれど、ちょっと寂しいので仲間がほしい。

 そんなことを考えていたら、客人来る。

 それにしても【魔王】ってなんなんだろうね。


次号予告:クレイジーエンジニアと新生活

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