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6-2 バー・ワリャーグへようこそ(2.5k)

「いらっしゃいませ。【バー・ワリャーグ】へようこそ」


 石造りの三階建ての建屋の屋上に着陸して一階まで降りたら、階段室から出たところでウェイトレス二名からの気持ちのいい挨拶。


 そこはカフェバーだった。

 昼は喫茶店、夜はバーになるような感じの店だ。


 そして、カウンター席の内側に【副魔王】のウラジィさんが居た。

 白シャツに黒ベスト、黒い蝶ネクタイ。それはバーテンダーのつもりか。良く似合っている。

 そんなウラジィさんが、俺達を見て一言挨拶。


「イラサイ」


 【マスター・ウラジィ】だ。

 なんか、街の名物になりそうだ。


「よく来たな若造。まぁ、座れ。開店前だが特別だ」


 着席を促されたが、ジェット嬢を背負う俺はこのままじゃ座れない。ウラジィさんの対面のカウンター席に固定式のカウンターチェアがあったので、そこにジェット嬢を降ろして座らせた。

 ジェット嬢は俺の背中から降りるのを渋ったが、カウンターチェアの座面に座布団を四枚敷いてやったらしぶしぶ椅子に降りた。


 俺は店内から背もたれの無いハイチェアを持ってきて、ジェット嬢の隣に座る。ビッグマッチョ故に、座れる椅子が限られる。背もたれがあると座りにくい。ひじ掛けがあると座れない。


「お久しぶりです。ウラジィさん」

「おお、その隣に居るベッピンさんが例の女か。いいのを捕まえるじゃないか。このダメ色男」


 言い方がひどいけど、ダメ男は事実なので反論できない。


「この方が【副魔王】様なの? ココで何してるの?」

「すまんな嬢ちゃん。放置してしまった。わしが【副魔王】のウラジィだ。【副魔王】がなんなのかは知らんが、このダメ男送り出した後に王宮に行って一仕事したら、この店もらった」


「あ、初めまして。イヨ・ジェット・ターシです。なんとなく経緯はわかりました」

「何がわかったんだ?」


 ジェット嬢が何かに納得したようだが、俺はよく分からないので聞いてみる。


「アンタ、人の顔覚えるのとか苦手?」

「そうでもないぞ。得意ではないが、顔見知りならそれなりに覚える。あのウェイトレスがヘンリー邸に居た二人っていうのも気付いてはいるんだぞ」


 あの二人は、投獄と投獄よりしんどい謁見の翌日、首都のヘンリー邸でジェット嬢とガールズトークをしていた【ザ・メイド】とメイだ。化粧が若干違うけどそのぐらいは分かる。


 首都在住なら、ここでバイトしても別におかしくは無いので気にならないだけだ。


「……」


 カウンターチェアに座るジェット嬢が俺を見上げる。

 もしかして、牢獄前で脚付きドレス姿のジェット嬢に【誰?】とか言ってしまった件を問い詰められるのだろうか。


 あの二人に気づいていた俺が、脚付きのジェット嬢に気づかなかったのが不自然と感じたのか。だけど、実はあの時気付いてましたと今更言っても、それはそれで怒られそうな気はする。


「ウラジィさん。お腹がすいたから、ちょっと歯ごたえのあるものが食べたいわ」

「つまみの干し肉あるよ。ホレ。これちょっと固いけどな」


 ジェット嬢の注文に、すぐに皿に盛った干し肉を出すマスターウラジィ。話題がそれたようで助かった。

 ジェット嬢はメイド服の中からラッシングベルトを出して、自分の腰のあたりをカウンターチェアに縛って固定した。シートベルトか。確かに椅子から落ちると大変だからな。その服本当に便利だな。他に何が入ってるんだ?


 黙々と干し肉を食べるジェット嬢。

 つい、その口元に目が行ってしまう。裏山の中で首筋をかじられた時、俺は出血していた。だが、人間の歯で首筋をかじってもそう簡単に出血なんてしない。

 今それほど重要なことではないが、気になると言えば気になる。


「何? 人の口元ジロジロ見て。食べてる時はあんまり見ないで欲しいんだけど」


 気付かれた。女性は目線に敏感だ。


「それとも、私の【歯並び】が気になる?」


 しかも、気になっている部分まで感づかれている。


「私もちょっと違和感あるのよ。見てもらえるかしら」


 そうなのか、それは丁度いい。ジェット嬢が口を開けようとするので、ちょっと近づく。


「曇るから、眼鏡は外した方がいいわよ」


 そうだな。そう言われて、眼鏡を外して、胸ポケットに入れジェット嬢の方を見た次の瞬間、見えたのは拳。


 バキッ ドガッ グシャッ 


 マスターウラジィが腹をかかえて爆笑している。


「気付け! 眼鏡の時点で気付け! 若造」

「うん。このぐらいね。鼻と顎のあたりがちょっと修正不足だったのよ」

「…………」


 鼻血を出しながらうなだれる俺。殴られる理由は自覚してる。

 いいんだ。もう、いいんだ。それにしても痛い。


「嬢ちゃん。まだ昼間だが酒でもどうだ?」


 一通り笑い終わったマスターウラジィが禁断の【昼間の酒盛り】に誘う。


「いいわね。ちょっと飲んでみたいわ」

「それなら嬢ちゃん。わしが一杯奢るよ」


 そう言ってマスターウラジィが、金属製の大ジョッキを出した。

 ビールかな?


「ジェット嬢、お酒飲めるのか?」

「飲めるかどうかは分からないけど、飲める年齢にはなったわ。多分」


 いままで未成年だったのか。あと、多分って何だ。

 いや、そこは聞くまい。【でかい】とはもう言えないが、体格的には成人なんだから、実年齢多少誤差あっても問題ないだろう。


 だが、俺は40代のオッサン。

 酒の失敗も数知れず経験した立場として言っておくことがある。


「自分の限界を知らない間は、度の低いものを少しづつ飲むんだぞ。口当たりがよくても一気に飲むな。そういう飲み方すると危険な種類の酒もあるんだ」

「分かったわ」


 そう言って、ジェット嬢はウラジィさんが出した大ジョッキの中身を一気に飲み干した。


「分かってねぇ! 全然分かってねぇ! ウラジィさん! アレの中身は何だ!?」

「カルーアミルクよ」


「一気に飲んだら危険なやつそのものじゃねぇか! しかもジョッキで出すような種類じゃねぇ!」

「何を言う。女は酔わせてなんぼだろ」


「それがバーテンダーの言う事か! 世界が終わっても知らんぞ!」


 結局、ジェット嬢はその一杯で潰れて昏倒。

 ウェイトレス二人に両脇から抱えられて、二階に運ばれた。

 二階は宿屋になっているそうなのでそこの客室に寝かせると。


 オッサンとして言いたい。

 どんな酒でもイッキは絶対ダメだ!

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