6-1 追い出されて、首都へ飛ぶ(1.7k)
40代の開発職サラリーマンだった俺が、剣と魔法の世界といえるこの異世界に転生してから一年と三十一日目。
【摂食障害】の後遺症で、ジェット嬢が何かに【覚醒】して何かを【解放】したことで、サロンフランクフルトの裏山で【滅殺破壊大災害】を発生させた翌朝。
俺達はサロンフランクフルト及び、ヨセフタウンの面々に見送られ、必要最小限の荷物を持って【カッコ悪い飛び方】で離陸。
一年以上お世話になった住処兼職場から旅立った。
【転勤】だ。
ジェット嬢にとっては【門出】らしい。
行先は飛びながら考えるということで、低高度飛行でとりあえず西方向に進む。
俺が上の飛行姿勢なので俺には下は見えない。だが、横を向くとヴァルハラ平野には麦畑が広がっており、北側に向かって開拓が進んでいるのが分かる。
比較的ゆっくりと飛びながらジェット嬢が声をかけてくる。
「多少やりすぎた感はあるけど、まさか追い出されるなんてね」
アレが多少か。
だが、そこは突っ込むまい。
全部俺が原因だ。
「とりあえず【魔王城】へ行こう。そこで荷物降ろしてから買い出しに行こう。村も近くにできたし、あの城は案外住みやすい。【魔王】呼ばわりされた俺が相方を連れ込んで住んでも問題ないだろう」
「【魔王城】が住みやすいって意外ね。でも、住む場所は確保できるとして、これからどうしようかしら」
別に何かをする必要も無いと思うが、俺も面白いことは無いかと探してしまう。
そして、つい思いついたことを口走る。
「【魔王妃】として世界征服でもしてみるか?」
ジェット嬢が飛行速度を下げてその場で旋回飛行を始めた。
【カッコ悪い飛び方】はホバリングも可能ではあるが不安定らしいので、止まりたいときはやや小さめの半径で旋回することが多い。
「…………」
ジェット嬢は何か考えているようだ。
しばらく旋回飛行を続けたのち、針路を南に変更して加速。
「それは面白そうね。だとしたら今の行先は首都ね」
「首都? 俺はあんまり行きたくないが、何をするつもりだ」
「【お礼参り】よ」
これは多分、参拝の意味では言ってない。別の意味だ。
ジェット嬢よ。
そんな言葉どこで覚えたんだ。
…………
【中央道】を目印に飛行し南下。首都近傍上空に到着。徒歩の旅だと数日かかる距離もジェット嬢と飛ぶとあっという間だ。
高度約300m、首都の城壁都市の外周沿いに旋回飛行。
ちょっと高台にある王城区画を中心とした城下町。
国のシンボルとされる塔が立つ王城区画を中心に、内側が高級住宅街、外側に向けて庶民らしさが増していくようなファンタスティック城壁都市。
そして、都市の外壁の外側には飛行場。
この首都に飛んできた時は毎回この飛行場に降りていたが、今回は飛行場に降りるわけにはいかない。ヨセフタウンに向かうときに王に無断で首都から脱出したので【お尋ね者】状態になっている可能性が高い。
「ジェット嬢よ、首都に来たはいいがどこに降りるつもりだ。俺は【お尋ね者】状態かもしれんぞ」
「それは私も同じよ。いっそこのまま王城に直行して、国王の執務室に窓から突撃とかどうかしら」
無茶苦茶言ってらぁ。
冗談じゃない。
「ちょっと待て。早まるな。俺が降りる場所を探す。市街地区画上空で高度を落として旋回頼む」
「了解」
水平飛行だと背負われている俺は下が見えない。
ジェット嬢の足技を使えば傾斜姿勢で直進して飛ぶことも可能だが、重い俺を背負った状態でそれをするのは腰に負担がかかるという。
そういうわけで、俺が下を見たいときは加速して旋回するのが常套手段だ。
高度約200m程度。
旋回しながら下を見て、目立たず着陸可能な場所を探す。
とりあえずは頑丈そうな建屋の屋上が目当てだ。
そういう目線で上空から屋上を物色していくと、市街地の飲食店街と思われる場所にいい場所発見。
本当に、すごくいい場所だ。
屋上に描かれた丸印の中に「H」のマーク。
前世世界でヘリポートのマークとして使われていた目印。
そして、その建屋の玄関にはウラジィさんの旗。
「ジェット嬢よ。白青赤の旗がある建屋の屋上に着陸だ」
「了解」
【副魔王】様と合流だ。




