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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第3話

「まだいるんじゃないのか」


「そんなことを言われたって、俺は校内選抜用の写真を選ばないと……」


 座ろうとしたその足が、椅子に当たってゴトリと音を立てた。


いや、やっぱ違うだろ、俺!


「あ、用事思い出した。ちょっと行ってくる。え、えっと、すぐ帰ってくるから。職員室に、ノート取りに行かないといけないんだった……。痛っ」


 また机に足をぶつけた。


絶対あざになっているやつだ。最悪だ。


「そうだ。数学のノート、忘れてた」


「いってら」


 廊下へ今すぐにでも飛び出したいけど、ゆっくりとそれを開ける。


慎重に扉を閉め、しっかりと隙間なく閉じられているのかを目視した。


よし。行こう。


 走りたいけど走らない。


走って行ったりなんかしたら、絶対引かれるし怪しまれる。


「あんた何しに来た?」って言われる。


だから走ってなんかいかないし、普段通り、何となく偶然通りかかったみたいな感じで、さりげなく……。


 右足が動き、左足が動く。


その交互に入れ替わる動きが、次第に加速している。


どうやって彼女に話しかけよう。


怪しまれない方法って、なにがある? 


普通に「おー」とか、手を振るくらい? 


そっからさりげなく近づいて、なにげない雰囲気で……。


階段を飛び降り廊下を駆け抜け、校舎を飛び出すと芝生を走った。


「こんにちは!」


 水たまりみたいな池の横に、彼女と荒木さんは立っていた。


「お……、お久しぶりですね! ……。げ、元気でした……か」


「……。どうした。ずいぶん息が切れてるぞ。走って来たのか」


「やだなぁ! ははは……。遠くで、ちょっと見かけたも……ので……」


「その割りには一直線だったぞ」


 両膝に手をつき、息を整える。


「舞香は?」


「何の用だ」


 ハクの手が、荒木さんの腕に触れた。


「お前が来るな」


「来ちゃ悪いのか」


 そう言われるってことは、こっちだって予想済みだ。


「お前が探してるのは、宝玉じゃない。お兄さんなんだろ?」


 彼女の意識が、ようやく俺に向いた。


「確かに会ったよ、あの教室で。だけどそれは、荒木さんじゃない」


 舞香の体が、その荒木さんから離れた。


「どういうことだ。もっと詳しく話せ」


「やだね。約束したんだ。絶対に他の人には話さないって」


「無駄だな。私がお前の中に入れば、それで済む話しだ。抵抗はできない」


 ハクが一歩ずつ俺に近寄る。


動きたいのに、金縛りにあったように体が動かせない。


彼女の両腕が伸び、頬を押さえた。


彼女の肩までの髪が揺れ、ゆっくりと額を合わせる。


「痛っ!」


 パッと雷光が走った。


チカリと眩しい光りに、思わず目を閉じる。


俺たちは互いにはね飛ばされ、尻もちをついた。


ハクの触れた額が痛い。


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