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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第3話

「使う労力が違うのだ。取り憑くのと化けるのとでは。体の動きも重いし、それでは見聞きするくらいでやっとだ」


 飲み終わった紙パックを、ブンと放り投げる。


超人的な飛距離とコントロールで、校舎脇に設置されたゴミ箱に転がり込んだ。


「舞香の体を借りた方が、出来ることも多いし、何よりラクでいい」


 彼女がくるりと振り返る。


うれしそうに足をぶらつかせ、俺をのぞき込んだ。


「で、終わったらどうする?」


「終わったらじゃない、撮影まだだろ」


 ジュースとコンビニでのアイス。


その後のラーメンとハンバーガーまで約束しないと、言うことを聞かない。


それを条件に、大声で名前を呼ぶことと廊下を走ること、俺に抱きつくことをやめさせた。


それと……。


「足!」


「へ?」


「スカートなんだから、ちゃんと足を閉じる!」


 舞香はその裾を持ち上げた。


「不思議な着物だ。確かに以前に比べると動きやすいし便利だが、うっとうしいといえば邪魔だな」


 俺の足に視線を移す。


「以前は色や柄の違いくらいしか、着る物に違いはなかった」


 その手が俺の太股に置かれる。


ゆっくりとズボンの生地をなでた。


「こっちの着物と、どっちがいいのだろうな」


「さ、触るな!」


 その手をつまみ上げた。


「圭吾はどうして、そっちの着物を選んだ?」


「お触り禁止って言ったでしょ!」


「顔が赤いぞ、圭吾」


 無邪気な彼女の顔が、グッと近づく。


その指先が頬に触れた。


「どうした? 熱でもあるのか」


 そのまま両手で俺の顔を挟む。


「宝玉さえあれば、すぐに治してやれるんだが……」


 じっと見つめてくる、その目が気になるのか、少し開いた唇が気になるのか、そのまま俺は動けない。


「だから、それを探しに来たんだろ?」


 頬に触れていた手を引き離す。


そういえば彼女の手をちゃんと握るのは、初めてかもしれない。

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