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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第16章 第1話

 写真コンクールの校内選抜まで、一週間を切っている。


使えそうな写真なんて、まだ一枚もない。


フォルダーに保存されている使い物にならない無駄な画像を、次々と飛ばし見ている。


俺はこれまでの数日間、一体何をしていたのだろう。


いくら演劇部の手伝いをしていたとはいえ、他のことをする時間もあったはずだ。


「よ。舞香ちゃんと付き合いだしたって?」


「誰だよ、そんなデマ流してんの」


「希先輩から聞いたぞ」


 狭い部室に一台しかないパソコンの前で、山本は俺の隣に座る。


「校内選抜に出す写真、選んでんの?」


「お前は?」


「いちおう決めた」


 山本はマウスを動かす。


カチカチとフォルダーを開くと、そこには舞台衣装を着て野外練習をしている演劇部員たちの、裏方スタッフを含めた練習風景が写されていた。


ふりそそぐやわらかな午後の日差しに、派手な衣装と制服のコントラスト。


緑の森を背景に、コミカルでユーモラスな雰囲気が映し出されている。


「……。なんか、有名な洋画の巨匠作品、元ネタ実写版って感じだな」


「マジ? ちょっとうれしい」


 山本は喜んでいる。


ちゃんと伝わってるじゃないか。


俺だって褒めたし、褒めたつもりだ。


「お前のは?」


 彼の動かすマウスが、俺の空っぽになったフォルダーをクリックする前に、それを取り上げた。


「結局、演劇部の動画編集に付き合ってたから、撮れてないんだよ」


「あぁ、舞香ちゃんのモデル撮影もまだだしな」


「うん」


 山本にそんなことを言われ、渋々三脚を担ぐ。


俺にはなぜか、顔を上げることは出来なかった。


「あ、今から撮影?」


「待たせてるから」


「頑張れよ」


 部室を飛び出す。


賑やかな放課後を、急ぎ足で通り過ぎる。


後ろめたさが俺の足を動かしている。


待ち合わせ場所の中庭に、もうすでに彼女は来ていた。


「早いね」


「ね、どこで撮る? 教室?」


 振り返ったその表情で、一枚。


「そんな突然始まるもんなんだ」


 呆れたような表情とその仕草に、また一枚。


「階段上って、教室に移動して」


 その指示に、彼女は動き出す。


一段一段と上ってゆく足元を、後ろ姿でまた一枚。

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