表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
83/113

第6話

「いまも後悔が残っていて、その妹にそっくりなハクを見ると、どうしても我慢できなくなるんだって」


「……。俺さ、前に荒木さんが龍のハクを捕まえて、外に放り投げてるの見ちゃった」


「そう! ツンデレっていうの? 人間の女の子の時と、龍の時との差が激しいの……」


 彼女の目に涙が浮かんだ。


「私のハクちゃんなのに……」


「えぇ? わ、私のって、宝玉見つけて天に返すんでしょ?」


 彼女の顔は、パッと俺を見上げた。


たっぷりと涙を含んだ目が震えている。


「どうしよう……。私、ハクと離れたくない。離れたくないの。本当は宝玉なんて、見つかってほしくない!」


「だ、だってそれじゃあ……」


「ハクとずっと一緒にいたい。私が死ぬまででいいから、天になんて帰らないでいい。そばにいてほしいの!」


 ドンッと俺の胸にすがりつく。


いや、ここ人通りの多い繁華街なんですけど? 


バシッと咄嗟に両手を挙げ、俺はバンザイ維持状態に突入!


「ちょ、ちょっと待って……」


「私、別れたくない!」


 いやいやいやいやいや! 


周囲の視線が痛い。


俺は彼女の肩を引き離した。


「どういうこと? もしかして、ハクの邪魔してんの?」


「じゃ……ま、は、してない。ただ、一緒にいたいだけ」


「好きなんだ」


 彼女の目に涙が浮かぶ。


「ペットって言ったら、ハクは怒るかもしれないけど、私にとってはもう、大切な家族みたいな存在なの。ずっと一緒にいたい。ハクはそうじゃないかもしれないけど、私は……」


 鼻水をズズッとすする。


強く固い決意に満ちた目で、彼女は俺を見上げた。


「ハクを天には帰さない。宝玉は見つけない。ハクの寿命が長いのなら、私の一生なんて一瞬のはずでしょ? だったら私が死ぬまで、絶対一緒にいてもらうから!」


 彼女の体が離れる。


ふらふらと歩き出した。


人通りの中でくるりと振り返ると、ビシッと俺を指さす。


「絶対に別れないから!」


「あぁ……」


 頭が痛い。


だからココ、人通りの多い繁華街なんですけど……。


街を行き交う人々の視線が辛い。


色んな意味で。


盛大なため息をつく。


やっぱり関わるんじゃなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ