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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第4話

 撤収作業が終わって、公会堂の外に出る。辺りの日はすっかり落ちていた。


演劇部員の最後のミーティングが終わると、いつの間にか用意されていた花束が、演劇部員全員に手渡される。


感動の一幕ってやつだ。


みんなは拍手と笑顔でその輪の中に入っていたけど、俺とハクは手をつないだまま、離れたところでその様子を見ていた。


ハクはまばたきもしないで、じっとその様子を見ている。


その中心にはやっぱり荒木さんがいて、やがてそれも解散となった。


「お待たせ」


 荒木さんがこちらに向かって来る。


何かと思ったら、いきなりハクを抱き上げた。


「いい子にしてたか」


 笑った! 


ずっと能面のように固かったハクの顔が、うれしそうに笑った。


荒木さんもハクのその表情に、目を細める。


抱き上げたハクの頬に自分の頬を寄せた。


「圭吾に意地悪されなかったか」


 ハクは荒木さんの頭にぎゅっと抱きつくと、その髪に顔を埋める。


声を出さず笑う彼女の姿に、俺は正直、面食らっている。


「もーね。荒木くん、ハクにベタベタのあまあま」


 荒木さんに抱かれたまま、ハクは自分で乱したその人の髪を、ちょろちょろと小さな手で直し始めた。


「はぁー。ハクはいい子だね。ありがとう。このまま抱っこしてる?」


 なぁ、兄妹だってのは、内緒にするんじゃなかったのか? 


いいのか、そんなんで? 


コレ絶対バレてるだろ。


他の部員たちはすでに姿を消していて、残っているのは俺と荒木さんと舞香、希先輩だけ。


「俺には妹がいたんだ」


 ふいに荒木さんは言った。


夕焼けの落ちてゆく日の光りが、その二人を包む。


「歳の離れた妹で、ちょうどこれくらいの年頃の時に病気で亡くして……。そっくりなんだ。だからどうしても、ほっとけない」


 ハクを見上げる目は、ここではないどこかを見ていた。


ハクもその彼の腕に高く抱かれ、じっと見下ろしている。


「にしたって、デレ過ぎない?」


 希先輩にそう言われ、ハクは再びぎゅっとしがみつく。


荒木さんの首にしがみついたまま、希先輩を見下ろした。


「黙れ。お前になど用はない」


「ちょっと! 本当の姿に戻りなさいよ。デレるのは妹キャラの時だけで、本当の姿にはこの人、全然興味ないんだから!」


「ハクちゃ~ん。そろそろ一緒におうち帰ろぉ」


 そう言った舞香の声は、泣きそうだ。


その涙の訴えに、ハクは荒木さんの腕の中で、ポンッと本当の姿であるチビ龍に戻る。


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