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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第2話

「大丈夫よ、私もついてるからー」


 希先輩の手が、俺の肩にのった。


全身がビクリとなったのを、ハクはフンと鼻で笑う。


いや、だから……困るって……。


 舞台下で撮影をしなければならない俺たちの席は、最前列の一番隅っこに用意されていた。


俺の補助として希先輩がつき、山本の方にはみゆきがいる。


ハクは冷ややかな目で俺と希先輩を順番に見上げたあと、俺の席だったはずのところに、ちょこんと腰をかけた。


仕方なく希先輩がその隣に座る。


「なんで来たんだよ」


 周囲に聞かれないよう、ハクにそうささやく。


ハクはこちらをチラリと見ただけで、返事はしない。


「この子、私に対しても無愛想なのよねー」


「最初めちゃくちゃ懐いてたじゃないですか。俺は未だに全然なのに」


「最初だけだったの!」


 何があったんだろう。


プリプリ怒ってる希先輩と、すました顔で前を向くハクを見比べる。


「ハク、世話になる人の言うことくらい、聞けよ」


 そう言ったら、ガツンと一発、足を蹴られた。


くっそ。


子どもの格好してるからって、ナメやがって。


「屋内では、帽子は取ろう」


 腹いせに帽子を持ち上げたら、あごひもがびよーんと伸びた。


それは素直に自分で外して、膝に乗せる。


舞台が始まった。


 何度も見たことのある、同じ動き同じセリフが、何一つ変わらないまま台本通りに進んでゆく。


ハクは練習していたのを、見てはいなかったのかな? 


他の生徒たちに見つかるのを恐れて、それも出来なかった? 


一人隅っこに座る、小さな女の子をそっと眺めた。


ハクを人間の女の子の年齢に例えたら、このくらいの年頃になるんだろうかと思うと、ちょっと複雑な気持ちになる。


希先輩はウトウトと寝てしまっていた。


何てことのない現代劇だ。


舞台は高校で、ちょっとしたミステリーを織り混ぜた青春モノ。


 ハクは人形のように、真っ直ぐ前を向いたまま、まばたきもしないでじっと見上げている。


天上に住む龍が、こんな人間のベタな物語に共感なんて出来るのかな。


俺にはそっちの方が不思議だ。


幕間にトイレは大丈夫かと、座り続ける彼女に聞いたけど、「うん」とうなずいただけでやっぱり置物のように動かない。

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