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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第6話

「ねぇ、こういうのってさぁ、どっかでチェックして合図送ることとか出来ないのかな」


「あるかもしれないけど、自分で気をつけて撮ることを意識してた方が、いいと思うよ」


「あ、そうか」


「あとで編集の時に加工もできるし」


「そっか! 圭吾、さすがだね」


「舞香も、もう出来るでしょ」


「めっちゃ時間かかるけどねー」


 何気ない会話に何気ないやりとり。


そう、これが俺の望む正しい日常だ。


「だけどコレ、体育館で撮影するのと、本番の公会堂でやるのとは、随分雰囲気違うよね」


「だろうね、三脚置ける位置とかも違うだろうし。舞台下で撮影するのとか、許可ってもらった?」


 俺は真っ黒な画面に浮かぶ、『参加中』の文字に向かって話しかける。


この向こうには間違いなく彼女がいるのに、姿だけが見えない。


「そっか。それも確認しとかないとね」


 動画編集と撮影方法の打ち合わせ。


それに合わせた台本のチェック。


それら全てが終わったころには、すっかり遅い時間になっていた。


「あぁ、もう寝ないと。明日は圭吾、来なくてもいいよ。学校も休みだし。山本くんにはこっちから伝えておいたから」


「……。え? だって、大丈夫なの? 困ってるんじゃないの?」


 真っ暗な画面のままの彼女は言う。


いまの俺には、これでしかつながれないのに。


「今日ね、部長に怒られちゃった。自分の写真展の方の撮影もあるんでしょ? いつまで迷惑かけてんだって。大会前にはモデルの撮影、終わらせておくべきだったって。当日だって手伝わせちゃうわけだし……」


「いや。それは、いまは忙しいから。OKしたのは俺だし、実際コンクールにも間に合うから……」


 パンッと、両方の手の平を打ち合わせるような、そんな音だけが聞こえた。


「ゴメン。大会が終わったら、すぐにモデルするから。それまで待ってて!」


「……。うん。分かった……」


「ゴメンね。付き合い長引かせちゃって。ありがとう。おかげでコツがつかめたよ。本番の動画編集は、できるだけ自分でやってみるね」


「頑張って」


「じゃ、おやすみ」


 プツリと通信は切れた。


突然静かになった画面に、耳のイヤホンを外す。


そっか、そうだよな。


俺は別に、関係ない人だもんね。


結局、ハクとの話しも出てこないままだ。


早く繋がりを切りたいのは、俺の方なのに。


明日はちゃんと、自分の撮影に集中しよう。


久しぶりの自分のための時間だ。


パソコンの電源を落とし、部屋の明かりを消す。


ベッドに転がり込んだ。


そうだ。


俺には他にすることが、沢山あるんだから。

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