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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第11章 第1話

 放課後のチャイムが鳴って、一番に教室を飛び出す。


部室へ向かった。


彼女とほぼほぼ一ヶ月ぶりくらいにやりとりしたメッセージで、約束も取り付けた。


俺は写真部で一番新しい三脚を抱えると、貸し出しノートに名前を書き込む。


ホワイトボードの出欠表を「校内」に動かした。


「あ、圭吾。ちょっと聞いたんだけど……」


「すみません、急いでるんで!」


 希先輩の呼びかけだって、今日は無視だ。


なんだかもの凄く緊張している。


誰かと約束をして待ち合わせるのって、こんなにも気を使うものだったんだ。


体育館へ向かう。


公会堂での上演に備え、最終チェックを兼ねた、大がかりな予行演習を予定していた。


これが校内では最後の練習となるようで、俺が着いた時には、すでに沢山の人や道具であふれていた。


「結局、舞香にモデル頼みやがって」


 正式に手伝いを引き受けることになった俺は、部長である荒木さんへ挨拶に行く。


さっそくイヤミを言われた。


「上手いことやってんな。ま、応援すると言った事に、変わりはないから。頑張れ。色々な意味で」


「色々な意味でね」


「ま、こちらとしてもありがたい話しだし? さすがはうちの優秀なマネージャーだ。我が身を犠牲にしてでも、ちゃんと成果を取ってくる」


 ニヤリと笑った荒木さんの、その笑顔の方が恐ろしい。


我が身を犠牲ってさ……。


俺の立場はどうなってんの?


今日は体育館を貸し切ってしまっているから、舞台がちょうどよく撮せる、正面中央にビデオカメラをセッティングする。


「わー、ありがとう! 助かる~」


 舞香が駆け寄ってきた。


「とりあえず、全体を撮影するのはこのカメラでいいとして、後は舞台下での撮影だよね」


 役者の動きに合わせて、胸から上のアップも撮影出来るようにしたい。


より動画の視聴者が見やすく、分かりやすい編集が出来れば、その先のコンクールの映像審査でも、優位に働くだろう。


実際に上位常連校はどこも、ただ全体を撮影しているだけではなかった。


「もちろん舞台自身の、中身が一番重要だってことは分かってるんだけど、やれるだけのことはやっておきたいの」


「うん。その気持ちは分かるよ」


 だから俺だって、協力してるんだし……。


まぁ、後で自分のモデルも、個人的に頼んでるし?


「あ、舞香ちゃん。よろしくねー」


 山本がやってきた。


俺は彼女にくっついて撮影テクニックを教え、コイツはその補助をする。


「舞台右袖が舞香ちゃんの担当で、俺が左側ね」


 山本め、ニヤニヤしやがって。


お前の狙いは別の子だっただろ。


三人で台本を広げた。


ホンは読み込んで来た。


山本との、役割分担の打ち合わせも出来ている。


それを今日の実践で試してから、公会堂での撮影に挑むつもりだ。


山本は俺の耳元でささやいた。


「ようやく動いたか。それでも動けてよかったよ」


「何がだ」


 やっぱりニヤリとだけ笑った。


どいつもこいつも、俺をバカにしやがって。


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