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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第8話

「おいチビ。お前もさっさと帰れよ。お前みたいなのがここにいたって、いいことはないだろ。俺みたいな、悪い奴に捕まって売られる前に、さっさと帰れ」


「お前なんか嫌いだ! 宝玉さえ見つかれば、すぐに帰る!」


「じゃ、舞香。公会堂の件、しっかり頼んだぞ」


 荒木さんの姿が見えなくなるのを待って、ハクは舞香の胸に飛び込んだ。


彼女もハクをぎゅっと抱きしめる。


「ゴメンね、また意地悪されちゃって……」


「いいんだ舞香。奴の言うことに間違いはないのだから」


 ハクは彼女の腕の中で頭をもたげた。


「私だって、本当は早く天上に戻りたい。ここに来ているということが見つかっては、相当に不味いのだ。舞香に出来るだけ、迷惑はかけないようにする」


「うん。大丈夫だよ。一緒に見つけるって、決めたのは私だから」


「少し頭を冷やしてくる。何か見つかるかもしれないし……」


 ハクは空へと舞い上がった。


やがてその姿も小さく見えなくなる。


彼女は溜まっていた涙を拭った。


辺りはすっかり薄暗くなっている。


「ごめんね。圭吾も、もう帰るよね。結局邪魔しちゃった」


 あのヒトに乱された髪が、彼女の頬にかかっている。


直す指の先は、それをくるりと耳にかけた。


「荒木さんは、からかってるだけだと思う」


「それでも、気に掛けてくれていることは確かだから。実際手伝ってくれてるし」


 それはそうかもしれないけど……。


「圭吾は……、そんなつもりはないんでしょう? 関わりたくないんだったら、口を出さないでほしいな。ハクのこと、あんまり大勢の人に知られたくないし……」


 彼女の横顔が沈む。


きっと怒っているに違いない。


腹を立てているんだ。


ムカついてる。


イライラして、このままじゃきっと……。


「分かった。じゃあもう聞かない」


「うん。その方が、うれしい……。かも」


 沈む夕陽が、真っ赤に空を染めている。


俺はもう、ここから動けない。


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