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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第7話

「悪いが邪魔するぞ」


 荒木さんだ。


全員の体がビクリと震える。


「なんだ、まだお祓いを済ませてないのか。さっさと神社でもどこでも行って、終わらせろ」


 ギロリとハクを見下ろす。


本当に、このヒトも知っているんだ。


だけど白銀の龍は、もう決して姿を見せることはない。


それは確かなことなんだろう。


「お祓いとはなんだ! 私はそんなことでは姿は消さぬ!」


「お前のおかげで、うちの優秀なマネージャーが部活に集中出来ない。さっさと消えてくれ。そのために俺は協力したんだが?」


 ハクは負けじとにらみつけた。


だがその何倍も荒木さんの方が強い。


「つまみ出すぞ」


 ハクに伸びた荒木さんの手を、舞香は遮った。


「ちょっと待ってください。ハクをいじめないで! 演劇部のことはちゃんとやりますから、部長こそ邪魔しないでください」


「当然だ。それで、公会堂での練習予定日なんだが……」


 この状態のまま、めちゃくちゃ普通に事務連絡を始めてしまった。


ハクはその隣でガチガチとちっこい牙を打ち鳴らし、荒木さんに噛みつく素振りを見せてはいる。


だけどそもそも、届きもしないし本気で噛みつこうとも思ってない。


「……。ねぇ、それでいいの?」


「何がだ!」


「いや……」


 妹っていうことは、ハクは本当に女の子なんだな。


「ハクは荒木さんのこと、嫌い?」


 そう言うとハクは、じっと俺を見上げた。


「コイツは本当に私をつまみあげた上に、放り投げたんだぞ!」


「俺も一回は触ってみたいんだよね」


 手を伸ばす。


やっぱりガブリと噛みつかれた。


「痛いって」


「私に触れていいのは、舞香だけだ」


「ならばその舞香に、俺も触れてやろう」


 荒木さんの拳が彼女に伸びた。


こめかみの辺りをそれで挟み込むと、グリグリと動かす。


「ははは。どうだ。お前にはこんなことは出来まい」


「えぇ? 別にそんな……」


 うらやましいに決まってるじゃないか。くそっ。


「痛い。地味に痛いです部長」


「舞香に何をする!」


 チビ龍はその手に、ガブリと襲いかかる。


だがそれは噛みつかれる前に、パッとよけられた。


「はは、相変わらずとろいな」


 笑った! 


荒木さんは、俺が今まで見たことのないような顔で笑った。

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