表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
56/113

第6話

「ここにお前たち以外の、誰かが来なかったかと聞いている!」


 荒木さんと目があった。


だが彼は何も答えない。


「……。お前、ハクなんだろ?」


 俺がそう言うと、彼女はキッとにらみつけた。


「そうだ。ハクだ。舞香の姿を借りて来た」


 彼女は俺の胸ぐらを掴むと、グッと引き寄せた。


「何かがここに来ただろう。その姿を現さなかったのか?」


「何もないよ」


「コイツも私の正体を知っている」


 荒木さんを指さした。


同じようにその胸ぐらを掴む。


「お前も圭吾が私の正体を知っていると、知っていただろう。何があった!」


「知らねぇよ。手を放せ」


 その彼女の手を、荒木さんはあっさりと振り払う。


「何だか知らないが、俺はお前らに一切興味はない。いまは撮影中だ。邪魔をするなら、出て行け」


 もの凄い形相でにらみつける彼女を、荒木さんは平然と見上げている。


ハクはチッと舌を鳴らすと、教室を飛び出していった。


「なんだアレ。二重人格かよ」


 荒木さんはふぅと息を吐き出すと、俺を振り返った。


「お前も物好きだな」


「……。何がですか」


「応援はするよ」


 龍に取り憑かれているのは、この人自身なのだろうか。


それともあの白銀の龍が、元々こういう性格なのか……。


理解の追いつかない俺は、まだ混乱している。


「おい。写真はもう撮らなくていいのか? 終わってんのなら、俺も行くぞ」


 正直ムカついてもいるし、怒ってもいるけど、結局なにを言っても無駄なんだろうな。


すましたその顔を、正面から撮ってやる。


パシャリと動作音が鳴った。


本当にこのヒトは、もう何も分からないのか……。


「荒木さんは、ドラゴンを見ても、なんとも思わないんですか」


「俺の人生に関わりないのなら、どうだっていい」


「……。そうっすよね。関係ないっすよね」


「当たり前だ」


 そう言って立ち上がったそのヒトを、じっと見上げる。


俺にちゃんとした判断が出来るかどうか、それは分からないけど、いま目の前にいるこのヒトは信用出来ると、その言葉になぜかそう思った。


 荒木さんが教室を出て行く。


俺は部室に戻り、撮影した画像をチェックした。


画面には人の形をした荒木さんの、窓辺にたたずむ姿しか写っていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ