表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
53/113

第3話

「荒木さんって、やっぱタダ者じゃねーよな。これだけの人数に動員かけて協力が得られるって、やっぱ顔だけの人じゃないんだよ。天は何とかっていうけど、圭吾もそこは認めた方がいいと思うよ」


 そんなことは頭では分かっている。


分かってはいるけど、どうにもならないのがヒトってもんじゃないのか?


「舞香を探してくる」


 荒木さんに見つかる前に、彼女を探して、とにかく情報を仕入れないと。


あの人と二人きりになって話しをしたとして、何の事前対策もなしでは、勝てる気がしない。


そう思っているのに、どうして彼女は荒木さんと一緒にいるんだろう。


体育館二階席の最前列、すぐ真下に舞台を見下ろせる位置に、並んで立っている。


そしてその隣には、もれることなく希先輩もついていた。


「ね、荒木くん。圭吾が来たよ」


「お、よかったよかった」


 当然のように、肝心の女の子二人は俺に手を振る。


気楽なもんだ。


荒木さんは近寄ってきた俺を見下ろした。


「いや、俺は舞香に用があって来たんですけど……」


「え? 舞香? やっぱ舞香をモデルにすんの? じゃあ……」


「違います!」


「じゃあ何の用だよ」


「そうよ。素直に舞香ちゃんにモデル頼みなさいよ」


 希先輩の冷やかしに、彼女は何のためらいもなく、手にしていた台本を客席に置いた。


「いいですよ。撮影行きますか?」


 だから、撮影じゃ……。


「あ、荒木さんにモデルをお願いしたいです!」


 自分でも、何を言ってるのか意味が分からない。


ただ俺の顔が真っ赤になっていることだけは分かる。


「……。え、俺? 本当に俺でいいの?」


「いいんです!」


 本当はよくはないけど、今さら引き下がれない。


「なんか逆に申し訳なくなってきたんだけど……」


「お時間は取らせませんので、手短にお願いします!」


「あーうん。じゃあちょっと行ってくるわ」


 そんなこんなで、二人で体育館を抜け出す。


体はもの凄くフワフワしているのに、どうして気分はこんなに沈むのか。


「なぁ、別に無理しなくていいんだぞ」


 後ろからついてきている、荒木さんのその声だけで、顔を見なくても表情は想像出来る。


「こっそり舞香と交代するか?」


「他に誰のモデルやったんですか。写真部の女子は全員荒木さんとか?」


「いや。結局、何だかんだで、他の人とか別の写真と被るからとかで、全部潰れた」


「え、希先輩も?」


 思わず振り返った。


階段の上から、その人を見下ろす。


「希は俺を指名しなかったよ」


「でも、他に希望者はいたでしょ」


「いたけど、被りすぎてみんな『やっぱいいです』ってなった。同じ被写体ばっかになるのは、みんなイヤみたいだな。個別では受けてないよ」


「あぁ、そういうことね」


 もうこの人とは、一生分かり合える気がしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ