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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第2話

 放課後になった。


今日は写真部の、月初め定例会の日だ。


ここにさえ顔を出していれば、写真部として認められる。


個別に撮影に向かうことが多い部員同士も、ここでは顔を合わせる。


「と、いうわけで、今年のテーマは『挨拶』です。校内選考の投票日までに……」


 希先輩の話しが続いている。


部長である先輩は、2年生の時から積極的に色々なコンクールに参加してる人だし、作品の質も高い。


こういう人が最終的に『選ばれる』人になるんだろうな。


「圭吾くん」


 解散となった後で、その希先輩に声をかけられた。


他の部員はそれぞれに帰宅してしまったり、撮影に出かけたりしている。


「まだ演劇部にモデル頼んでないでしょ。圭吾だけだって荒木くんが言ってた」


 希先輩は、あれからどうしたんだろう。


「まぁ、圭吾は元々人物撮らない人だし、必要ないなら、ないでいいんだけど。せっかくだからチャレンジしてみれば?」


 ふいに彼女の顔が近づく。


ドキリとした俺に、サラサラとしたショートボブの髪が耳をくすぐる。


「舞香ちゃんに頼んでもいいってよ」


「だからそれは!」


「はは。じゃあね」


 そんなことを言われたって、俺は演劇部の奴らにモデルを頼む気はさらさらないんだ。


たとえ撮ったとしても、今のこのつながりの中で、撮影することはないだろう。


幸いにも、学校周囲は豊かな森が取り囲む。


少しレンズを絞って角度を調整すれば、森と空が綺麗に写るんだ。


そうだ。


許可をもらって、校舎の屋上から撮影するのもいいかもしれない。


与えられたテーマとは別に、フリーテーマでの出展も可能なのだから、今年のテーマにこだわることもないし……。


 カナブンを見つけた。


何の花だか知らないが、花壇に植えられていたピンクの花に、ピカピカ光る緑の頭を突っ込んでもがいている。


花粉にまみれながらももがくその姿を、すぐさま画像に収めた。


これだって立派な『挨拶』だ。


 夏の日は、あっという間に過ぎてゆく。


一部の生徒たちの間で、演劇部の大会参加が話題になり始めた。


普段はお菓子サークルと化している家庭科部との連携をとりつけ、衣装製作を頼むことになったらしい。


その衣装を着た役者を写真部の部員が撮影し、学校SNSに上げたことで火が付いた。


おかげで体育館の二階席には、連日野次馬の姿が見える。


協力を申し出る生徒も増え、監督であり部長でもある荒木さんの周りに、もはや人の絶えることはない。


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