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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第8章 第1話

 ようやく梅雨が明けて、本格的な夏がやってきた。


俺はいつものように朝のぎゅうぎゅう詰めのバスに揺られ、学校へ向かう坂道を上る。


「おはよう」


 写真部も夏のコンクールとその展示会へ向けて、作品作りが本格化し始める頃だ。


「おはよう」


 偶然一緒になった舞香は、相変わらず肩先で黒髪を揺らしている。


「何か進んだ?」


「何が?」


 照りつける日差しは朝からキツくて、上り坂を歩いて上らないといけない俺たちには、少し辛すぎる。


「圭吾の方は?」


「俺?」


「希先輩が、これから忙しくなるって言ってた」


「まぁね」


 忙しくって、なんだ? 


写真展とコンクールのこと? 


それとも、宝玉探しのこと?


「……。校内で、2人しか参加枠がないから。展示会前に校内選抜があって、投票で選ばれた2枚が、コンクールに出展できるんだ。展示会は、普通に全員参加出来るけど……」


 そうだ。


これから俺は、沢山写真を撮らないといけない。


今年のテーマは何だったっけ。


そういえばまだ、聞いてなかったな。


「そうなんだ」


「演劇部の方は? 練習進んでるの?」


「今年は部長の気合いが違うからね」


 そうやって微笑む彼女の表情が、どうして俺にはいつもより、眩しく見えてしまうのだろう。


直視できない。


「何だかんだで脚本も決まったし、練習は本格化してるよ」


 彼女は演者でもないのに……。


小道具で、撮影係で、マネージャー的な人だから、本質的な所には、関係してないのに……。


「そっか。頑張ってね」


「ありがとう」


 手を振って別れる。


クラスが違うから靴箱の位置も遠くて、わざわざ会いに行かなければ、すれ違うことも話すことも何もない。


同じ学校の同じ校舎にいながら、無関係に過ごす人間の方が圧倒的に多いんだ。

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