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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第10話

「で、舞香の使命はどうなったの? ハクから言われた課題があったでしょ」


 俺はつい頬杖ついて、ため息をつく。


「そんなことも知らないで、簡単に希先輩も仲間入りだーとか言えるの?」


 舞香が俺を振り返った。


目が合ってしまって、逃げるように視線を外す。


「え、課題? 課題ってなに?」


 乗り気の希先輩に、舞香は説明を始めた。


1,200年前、天から落とされた宝玉の行方を捜していることを……。


「う~ん……。郷土資料館とかは?」


「郷土資料館? そんなのがあるんですか? 地元の図書館に行って、そこに置いてある郷土史は調べてみたんですけど、池のことだけってのは、なかなか載ってなくて……」


「あら、それで二人で調べ物とかしたりしてたの?」


 希先輩は、ニヤリと笑ってこっちを見る。


「あ、その……。圭吾は……」


「誘われてないから」


 そう。


俺は、誘われていない。


「誘われてないから、手伝ってない」


「あぁ、そうだったんだ……」


 希先輩が俺を見下ろす。


俺はまた視線をそらす。


「私はちゃんと手伝うから」


「ありがとうございます」


 ほらね、やっぱり俺は誘われない。


いらない人間なんだったら、邪魔にならないようにしなければいけない。


「じゃ、先に帰りますね」


 通学用のリュックを肩にかける。


「お疲れさま」


「またね」


 なにが『お疲れさま』だ。『またね』だ。


閉めた扉の向こうからは、もう何の声も、物音も聞こえなくて、どうして希先輩はこんなタイミングで、ノックもせずここを開けたのかと思う。


そうじゃなかったら、俺はそのまま彼女と話しをしていて、ハクのこともバレなくて、普通に……。


 いつも遅れてやってくるバスは、やっぱり遅れてやって来て、俺はいつものようにイライラしながら、それに乗り込む。


少し下校時間が早まったせいで、今日は自分と同じ制服の群れで、あふれかえってはいなかった。


ようやく息を吐き出す。


 まぁいいよ。


あんなのに関わったって、時間の無駄だ。


帰って宿題しよう。


あんな意味の分かんない連中と違って、人生は短いんだ。


そもそも自己責任だろ。


なくしたものが見つからないとか。


それを人任せになんてしないで、自分でなんとかしろよ。


自分に出来ないことを、他人に押しつけるな。


悪いのは全部自分だろ。


だったらちゃんと、自己完結しろよ。


 そう考えると、急に気が楽になって、渋滞のなか動かないバスに揺られているのも、楽しくなってきた。


家に帰ったら手を洗ってうがいをして、ご飯食べたら風呂入って、宿題をしよう。


それが何よりも、平和で幸福な証なんだから。





*2022年3月29日夕方頃~次回更新予定になります*

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