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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第5話

「俺はいま、自分のやりたいことで精一杯だから、他のことなんて考えられないね」


 遠くに見える、ここと繋がる二階席の向こうで、希先輩は舞台に向かってスマホを掲げている。


その小さな画面を舞香はのぞき込む。


「演劇の大会ですか?」


「うん」


 そういえばこの人、さっきチビ龍を見つけたのに、そのまま掴んで放り投げてたな。


「自分以外のことに、興味ないとか」


「そうじゃない奴がこの世にいるのなら、逆に見てみたいね」


 その大きな手が、俺の頭に乗せられる。


ぐしゃりと髪を乱した。


「ま、嫌いじゃないけどね」


 それはどういう意味なんだろう。


同じ髪型をしているクセに、全く何を考えているのかが分からない。


「お前がやらないんなら、俺が代わりに行くぞ」


 乱された頭を調えると、その人と同じになってしまうような気がして、だけどぐちゃぐちゃにされたままでいるのも嫌で、結局髪を直す。


荒木さんはそのまま二階席を移動して、希先輩と舞香の隣に座った。


「はぁ~、いいよなー。あぁいうことが自然に出来る人って」


「何が?」


「モテる秘訣」


 くだらない。


そんなの顔の作り以外の他に、なんか要素ある?


「つーか、お前今日何枚撮ったんだよ」


「雨だもん、ほとんど撮ってねーよ」


「まぁそうだよなー」


 ふいに舞香が立ち上がった。


希先輩と荒木さんに小さく手を振る。


こちらに向かってくるのは、きっと二階席から階下に下りるため。


すれ違う時に、チラリと目があった。


彼女はペコリと頭を下げる。


俺も同じように返して、そのまま通り過ぎていった。


「……。あーあ。マジで終わってんだな」


「だから、なにも始まってないっつーの」


 そうだ。


だから、何てこともない。


当然だ。


俺と彼女は、同じ学校の生徒同士。


以上、終了。


 希先輩と荒木さんが何かをしゃべっている。


が、すぐに荒木さんは立ち上がり、別の部員と話し始めた。


そのまま二階席の手すりから身を乗り出し、すぐ下の壇上にいる演劇部員たちに向かって、何かを叫んでいる。


取り残された希先輩は、その後ろ姿にそっとレンズを向けた。


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