表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
37/113

第7章 第1話

 梅雨の季節がやってきて、雨の日が続く。


それが何よりも辛いのは、外での撮影が難しいこと。


雨に濡れた緑の若葉は美しいと思うけれど、カメラに収めるとなると一人では難しい。


傘を肩と首の間に挟んで、ピントを絞る。


跳ねた水滴がレンズに飛び散って、撮った画像も歪んでしまった。


「圭吾はなんで体育館に来ないの?」


 希先輩の声だ。


なんだか話しをするのも、久しぶりのような気がする。


俺は傘を片手にカメラを抱えていて、彼女は渡り廊下の屋根の下を身軽に通り抜ける。


「狭いし蒸し暑いから」


「はは、らしい答えだね」


 目の前を3人の女生徒が通り過ぎた。


カラフルで可愛い傘が並ぶその後ろ姿を、彼女はすぐに画像に収める。


「うちも学校外に公認URL取得して、作品アップしようかと思ってるんだけど。どうかな」


「いいんじゃないですかね」


「その作業、お願い出来る?」


「……。部長からのお願いなら……、基本断れないっすよね」


 希先輩からのお願いなら、なんだってするさ。


「ま、いま思いついただけの話しだから、本当にそうするのかどうかは、分かんないけど」


 彼女は笑った。


その笑顔にカメラを向けられるのなら、どんなによかっただろうと思う。


だけどもちろん、そんなことは出来なくて、俺はただため息をつく。


「冗談で言わないでくださいよ。本気にしたらどうするんですか」


「別にいいけど?」


 降り続く雨は止む気配もなくて、希先輩はトタン屋根の下でにこりと笑った。


「私、体育館行こーっと」


 ひるがえる制服のスカートの裾に目をそらす。


今さら演劇部のいる体育館になんて、行けるわけない。


別に特別な理由なんてなにもなくて、ただ俺の撮影対象がそこにないってだけだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ