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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第6話

「圭吾はそのままでいいよ。今のままで」


「あー……。うん。ありがとう」


 それなら俺の望むところだ。


問題はない。


彼女は立ち上がった。


「じゃ、鍵締めて帰ろっか」


 ちゃんと話しをしてみれば案外簡単なもので、俺はあっさり解放されてしまった。


舞香も何でもないことのように、当たり前に接している。


なんだ。


ま、そんなもんか。


だよな。


舞香とよく話すようになってから、日は少しずつ延びていた。


それなのに今日は、まだ明るい山道を一言もしゃべることなく下り始める。


彼女の髪は相変わらず肩先で揺れていて、このままコンビニ前で別れたら、俺はもう彼女との関わりをなくしてしまうのだろうか。


「舞香はさ、嫌じゃないの?」


「何が?」


 チビ龍との関わり? 


それとも、俺とのこと?


「なんか色々、面倒に巻き込まれること」


 急な下り坂を歩きながらしゃべるのは、通い慣れた通学路といえども話しにくい。


「別に。嫌なことは嫌だってちゃんと断るし。手伝ってもいいなーとか、やってもいいなーって思ったことだけを、ちゃんと選んでやってるよ」


「嫌になったりしないの?」


「それは、思ってたことと違うってこともあるけど、頑張れる間は頑張るかなって思ってる」


 そう言った彼女の横顔は、真っ直ぐに前を向いていて、これ以上俺に出来ることはないんだと悟った。


「そっか、じゃあ頑張ってね」


「うん。またね」


 手を振って別れる。


彼女は点滅を始めた麓の横断歩道を、駆け足で通り過ぎてゆく。


俺はその場に立ち止まったまま、いつも遅れてやって来る遅いバスを待ち、太陽の沈んでゆくのを眺めていた。


面倒だと思っていた肩の荷は下りたはずなのに、全く軽くならない。


夜になって、彼女から入ったメッセージにも、何一つ浮かばれない。


【練習で撮った動画、つなげてもあんまり長くならなかったんだけど】


【それ自体を外部に上げるわけじゃないし、練習としては十分じゃない?】


 添付された動画は見た。


その内容にだなんて、興味はない。


【長く撮ったと思ってても、案外短いもんだね】


【実際の撮影は舞台の本番なわけだから、もっと簡単だし時間とか気にしなくていいし。編集も特にないでしょ?】


【舞台全体と、近影くらい】


【もう出来るんじゃない?】


【そうだね、ありがとう。また分からなくなったら聞くね】


【うん。じゃあ頑張って】


 俺はすっかり身軽になって、正常な普段の日常を取り戻した。


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