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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
33/113

第3話

 階段を上がると普通に廊下があって、普通に教室に入れば、普通に普通が広がっている。


普通が一番だ。


そんな当たり前のことを守るために、俺はどんな努力も惜しまないし、譲る気も無い。


「で、告白は成功したのか」


 早速山本が絡んできた。


「告白ってなんだよ」


「付き合いだしたの?」


「だから、そんなんじゃないって。つーか、なんで俺から?」


「……。そりゃそうだろ。お前がモテるのがおかしい」


 そういうお前の偏見もどうかと思いますけど? 


「普通に動画編集の話ししてただけだよ。つーか、お前だって彼女いないだろ」


「だよなー」


 山本はボウズスタイルの頭をボリボリと掻いた。


「ま、現実はそんなもんだよな」


「そんなもんだよ」


 当たり前な普通を守って何が悪い。


それより困難で難しいことなんて他にあるか。


当然だ。


午前の授業は終わって、昼休みが過ぎた。


鳴るか鳴るかと待ち構えていたスマホは、結局鳴らないまま放課後を迎える。


入った部室には誰もいなくって、ホワイトボードの出欠表は、みんな撮影に出払っていて、俺は一人そこに取り残されていた。


もしかしたら彼女が編集作業のために来るかもしれない。


そんなことが頭をよぎる。


だけど、約束のない待ちぼうけは無意味な気がして、俺は自分のカメラを首にかけた。


スマホはいつだってポケットに入っている。


もし今日も彼女の方から編集作業を教えてほしいと思うなら、連絡さえくれればいつだって直行だ。


他に急ぐ用事もないし。


 カゴに放り込まれている『写真部』の腕章を腕に通した。


俺はこれからちゃんと真面目に写真部としての活動をするんだ。


無関係で余計なことになんて、関わらないでいい。


あれ? 


だけどもしかして、宝玉が見つからない限り、彼女は一生あのチビ龍に絡まれ続けるのかな。


寿命を考えると、ありえないことではない。


けど、メインは俺じゃないし、彼女の方だし……。


ま、いっか。


 そんなことをあれこれと考えながら、気がつけば1時間以上経過していた。


さすがにすることのなくなった俺は、あきらめて外に出る。


校庭には新鮮な空気が流れていた。


 写真部の活動範囲は、基本的には校内のみだ。


人物の撮影が余り好きではない俺は、誰もいない教室や廊下、雲なんかを相変わらず撮っている。


花壇に咲き始めたアジサイを見かけて、それにレンズを絞った。


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