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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第7話

「圭吾はこの池が好きか?」


 グッと近寄るその顔が近すぎる。


一歩ずつ寄ってくる足取りに合わせて、俺も一歩ずつ後ろに下がった。


俺は彼女が何者かに取り憑かれていることを知っている。


その取り憑いているバケモノも、俺が知っているということを知っている。


だけど舞香だけは、そのことを知らない。


彼女は彼女の秘密を、俺が知っているということを知らない。


 彼女がくるりと背を向けた勢いで、肩までの髪はサラリと広がった。


その光景を見るだけで、くらくらして目が回りそうになる。


自分の顔が、真っ赤になっているのが分かる。


その不自然さはもちろん自覚しているけれど、自然現象なんだから仕方がない。


こんなことで彼女がヘンな誤解でもしないかと、そっちの方が心配だ。


「好き……でもないけど、嫌いでもないし……」


「ここが出来る時に、変えられてしまったのか」


「学校ホームページにも、そう書いてあったよね」


 スマホの画面をもう一度開く。


いや、フツーこういう話題で盛り上がったりなんか、しないよ? 


こんなつまんない話しになんて、乗っかってくれる奴いないよ? 


それは彼女だからではなく、彼女に取り憑いたバケモノに、俺が頼まれているからだ。


小さな画面に彼女の顔が近づく。


「そうだな。しかしこれは、学校建設以降のことしか記録がない。それ以前は、どうしたらよいのだろうか」


「……。どうしたらいいんだろうね」


 知るかよ、そんなこと。


棒読み風な彼女のセリフにも、若干焦りを感じ始めている。


検索画面に戻った。


池、歴史……で、検索してみるか。


「……。その小さな機械はなぜ……あ……。いや、だ……待てっ!」


 突然、舞香は一人でオロオロとし始めた。


パタパタと両手を忙しく振っていたかと思えば、腰に手を当てふんぞり返る。


「だから……、ねぇ! って、ちょ、ま……」


 今度は、水中をかき分けるような仕草をした。


じっとそれを見ている俺に気づいた彼女は、ピタリと動きを止める。


真っ赤に照れた彼女が、俺のスマホをのぞき込んだ。


「ははは。へー。池って、人工的に作られていることの方が多いの

か……」


「自然にあるものじゃなくって?」


「も、もちろん、そういうのもあるみたいだけど……」


 突然雰囲気の変わった彼女に、俺は違和感しか感じない。


彼女自身も、自分のとってみた行動に限界を感じているようだ。


「だとしたら、この池も人工的な池?」


「だけど、ここは元々あった池を埋め立てた残りなんだよね」


「じゃあその前は、この山奥に人工的な池があったってこと?」


 互いに見つめ合う。


「あはは……」


「ははは……」


「はぁ~……」


 同時にため息をついた。


いや、俺にはこれ以上、一緒にいるのは無理だ。


色々と。


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