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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第5話

 こうやって見ている分には、彼女は何者でもなく普通の女の子に見えた。


自分自身が乗っ取られてるとか、そういう自覚はあるのかな。


それとも同意はあった? 


だけど、乗っ取られた瞬間をみてしまった俺としては、少なくとも乗っ取られることに対して、同意はなかったように思う。


まずはそこを確認してみたいけど、それをどうやって聞きだそうか……。


彼女自身は、あのバケモノの正体を知っているのかな……。


 写真部と違って、演劇部は人数が多い。


やっている作業もそれぞれだ。


舞香はスマホを動画撮影設定にしたまま、台本チェックをしている部長を下から撮ってみたり、大道具チームの作業風景を、インタビューを交えながら撮影していた。


そんな彼女に向かって、俺はなんとなくシャッターを切る。


きっと彼女には気づかれていないから大丈夫。


 俺はその一枚を撮っただけで、なんとなくここには満足してしまった。


空に軽々と浮かぶ大きな鳥を見つけて、それを収める。


きっとあんな風に空を飛べたら、気持ちいいんだろうな。


演劇部員たちの賑やかな活動が続いているその場所を、俺はそっと離れた。


 水たまりみたいな、小さな池のほとりに立つ。


水面にアメンボが浮かんでいるのを見つけて、また一枚。


俺はこの場所が好きだった。


蚊が湧くとかいって他の皆は嫌がるけど、実際にはそうでもない。


池の周囲は整備された芝生が取り囲み、その向こうには原生林がそのまま残っている。


近所の猫が顔を出すこともあって、近寄っては来てくれないけど、写真は撮らせてくれる。


「舞香の写真はもういいの?」


 ふいに声をかけられて、俺は渋々と振り返る。


荒木さんだ。


「せっかくのチャンスを無駄にするなんて、もったいない」


「なんでこっちに来たんですか」


「いや、キミが抜け出したから。何かあるのかなーと思って」


 その端正な顔が、ふっと微笑んだ。


横顔を向け、彼の流れた視線の先は、小さな池を捕らえていた。


「この池は、昔はもっと大きくてね。深さもずっとあった。深い森の山の奥で、こんな人里迫る賑やかな場所ではなかったんだ」


 今は芝生の広がるだけの場所に、両腕を広げる。

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