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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第4話

「えっと……。ネットで公開する予定なんだよね」


「うん。学校SNSだけじゃなくって、演劇関係の内部サイトで見られるような感じ」


 舞香の肩がすり寄ってくる。


彼女的にはスマホを掲げて撮影している、その小さな画面を一緒にのぞいて欲しいらしい。


どうしてスマホはこんなに小さい上に、両手で撮影しなければいけないんだ。


「画角って分かる?」


「撮影する時の、画の構図ってこと?」


 彼女の手に触れないよう、わずかにその角度を変える。


「あぁ、うん。ま、いっか。それと、焦点を合わせるってこと」


「勝手にピント調節してくれるんじゃないの?」


「あーうん。それでいいと思うよ」


 肩までの黒髪が鼻先をくすぐる。


近づきすぎた距離に、慌てて離れる。


彼女はちょっとムッとした顔をした。


「演劇って、基本舞台の上でしかやらないからさ。もちろん、そうじゃないのもあるけど」


「そうだね」


「私はスケジュール管理とか買い出しばっかで、こういうの初めてなんだ。だからどんくさいかもしれないけど、ゴメンね」


「いや、それは大丈夫……」


 気づけば荒木さんは演劇部員の中心に戻っていて、台本のようなものを片手に何かしゃべっている。


舞香の掲げるスマホの画面越しに、そんな荒木さんにレンズを向ける希先輩の姿が写った。


「……まぁいいや。ピント調節とかも、使うカメラによって違うから」


「じゃあどうすればいいの?」


 どうすればいいんだろう。


俺はこのまま、こんなことをしていていいんだろうか。


小さな画面の向こうで、希先輩はどこかに行ってしまった。


「ビデオカメラとかないの?」


「ハンディカムってやつ? あるけど古い」


「じゃあスマホ撮影でつなげるか。それなら台数もあるしね」


「ねぇ、本気で面倒くさいって思ってるでしょ」


「今さらそんなことないって」


 なんだか非難じみた表情で見上げられたけど、本当にそんなことはどうだっていい。


「とりあえず好きなように撮ってみて。それで編集してみて、どうやって撮った方が後から楽になるとか、分かってくると思うから」


「はーい」


「本当はビデオカメラとかがあった方がいいと思うけど。容量とかズームした時の、画質とかの問題だけだけど……」


「はーい」


 放課後の校庭を、爽やかな風が吹き抜ける。


てか、なんで俺が教えることになってるんだろう。


通りかかったみゆきに文句を言ったら、「まぁまぁ」とか言ってニヤニヤされただけだし。


その舞香はスマホを掲げたまま、前後左右に動きながら、演劇部員たちを撮影している。


太陽からの光りは柔らかく彼女に降り注ぎ、真剣な表情の横顔は、時折かけられる冗談に笑う。


吹く風が彼女の肩までの髪を揺らした。


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