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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第5章 第1話

 そんなことのあった次の日の放課後、無関係を決め込んだ俺は、写真部の腕章をつけて校内を回っている。


足元に小さな花が咲いているのを見つけて、地面にしゃがみ込んだ。


「圭吾は、本当にそんなのばっかりだね。自然写真家なの?」


 聞こえた声に、ドキリとする。


希先輩だ。


その勢いでシャッターまで切ってしまった。


その音が二重に重なって聞こえてくる。


「ふふ。私も圭吾の写真撮ってる写真、撮っちゃった」


「……。まぁ、別にいいですけどね。写真部同士だし」


「いいの撮れてる?」


「まぁ、多少は……」


 並んでその場に腰を下ろす。


カメラの保存データを開いて、ここ数日の成果を互いに見せ合った。


希先輩の被写体となる対象は、圧倒的に人物が多い。


全く知らない人を撮るにはクレームも多いから、結局写真部同士か友達、先生とかに限定されてしまうのが、難しいところだ。


だから俺は、人を撮るのはあんまり好きじゃない。


撮らせてくれませんかってお願いして、断られることを考えれば、そんな無駄な時間と労力なんてかけられない。


「本当にさ、演劇部の申し出ってありがたくって」


 結局希先輩は、演劇部員個人にモデルを指定して頼むわけではなく、その活動中の風景をあちこちでウロチョロしながら撮影していた。


「やっぱり、部長の荒木さんは画になりますか?」


「まぁね、彼は目立つからね。背も高いしね」


 以前から気にはなっていた。


いつも先輩の写真に残っている人。


撮影する回数の多さとかじゃなくって、見上げる視点とか遠くから隙間を縫って撮影される、その撮り方の上手さ……。


「前からよく、撮ってましたよね」


「え? そうかな。あんまり自覚なかったけど……」


 そう言ってわずかにうつむいた、先輩の横顔にレンズを向けた。


パシャリというシャッター音が校庭に響く。


「そういう圭吾は、結構私撮るよね」


「まぁ部長だし。撮っても文句言われないし」


 そんなこと、気づかれてるだなんて思わなかった。


「さっき先輩だって、俺のこと撮ってたじゃないですか」


「あはは、本当だね。じゃ、また撮っちゃお」


 向けられるレンズの視線に、なぜかムッとする。


だけど、今だけは、きっと彼女と目が合っているんだ。


俺からはそれが、分からないけれど……。


この瞬間を、どんな顔をしていればいいのだろう。


それが俺には分からないから、撮られるのは好きじゃない。


カメラが完全に下ろされる前に、横を向いた。


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