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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第4話

「じゃあ、舞香はどうなるの……」


 彼女はため息をついた。


「舞香には内緒にしておいてくれ」


「は?」


「彼女は返してやろう。だが私の目的は、まだ達せられていない。それが叶わぬことには、舞香にもお前にも、身の保証はないと思え」


 ちょっと待て。なんだソレ!


「私はまだ、この新しい世界の仕組みについて行けぬ。慣れるまで舞香を助け、我が望みを共に叶えよ」


 張り詰めていた空気が、入れ替わったような気がした。


鋭い目つきをしていた彼女の表情は、何となく柔らかさを帯びる。


目のあった瞬間、彼女はビクリとなって驚いた。


「あ……、圭吾?」


 俺はまだ、床の上にしゃがみ込んだままだ。


「な、何してるの……」


「いや、別に……」


 どうしよう。


めっちゃ無理難題を押しつけられたような気がする。


「ま、舞香こそ、何してるの……」


「あ、あぁ……」


 彼女は困ったような顔をしながらも、さっきまでと同じように、資料室のドア窓を指さした。


「アレ、何なのかなぁ~って、気になっちゃって……」


 俺は恐る恐るそこから立ち上がる。


膝がガクガクと震えているのを、隠すだけでも精一杯だ。


やっぱり追いかけてなんて、こなければよかった。


それはそうなんだけど、もちろん今さらなんだって感じだけど、得体の知れないバケモノからの言いつけに背いて、恨まれるのも嫌だ。


ビクビクしながらも、小さな窓枠から中をのぞき込む。


そこにあったのは、学校沿革を年表のように示した古いパネルだった。


「アレがどうかしたの?」


「……。アレ、なんだろう……」


「アレね……」


 俺にはさっぱりわけが分からないが、どうやら彼女自身も分かってはいないらしい。


「アレ、だね……」


「は、はは……」


「ははは……」


 互いに見つめ合って、覇気のない笑いでごまかす。


「か、帰ろっか」


「うん」


 演劇部の方へ顔を出すという彼女と、そこで別れた。俺は真っ直ぐ家に帰る。


ヘンに寄り道とかしたりして、またヘンなものと遭遇したくない。


とりあえず安全と思われる自室に籠もると、問題の資料室画像を拡大した。


昼休みにバケモノが反応した画像だ。


たしかにここには、資料室にあった学校沿革のパネルの一部分が写っていた。


元々あった山を削ったことが書いてある文章の横に、埋め立てられる前の池の写真が載せられている。


そのほとりには、池の主を祀ったような小さな祠も写っていた。


池か。


そういえば初めてあのバケモノを見た時も、あの池のほとりに下りてきていたじゃないか。


きっとアイツは、あの池の主とかなんかなんだな。


きっと。多分……。


 何となく正体が分かってしまえば、怖いものはない。


だが触らぬ神に祟りなしという言葉のある通り、触らぬにこしたことはない。


助けろとは言われたけど、俺が正体を知っていることも内緒にしとけって……。


そんなのもうムリってことでしょ。


やっぱ俺には、関係ないね。


まぁ、そういうことにしておこう。


他の選択肢なんて、怖いしさ。


俺は布団に潜り込むと、寝た。


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