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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第3話

「……。アレってなんでしょうか……」


「アレはアレだ」


 彼女の指先が、扉のガラス窓に触れる。


だから、廊下の角からそこは見えないんだって。


「私が怖いのか?」


 その指先は窓ガラスを離れた。


「なぜ畏れる。先ほどまで普通に接していたではないか」


 彼女の足が一歩近づく。


俺は一段と腰が引ける。


「待て。それ以上近寄るな」


「近寄るなとはどういうことだ。何を知っている。……。あぁ、そういうことか」


 ダメだ。


これ以上近寄られたら、もう逃げられない! 


ギュッと目を閉じた。


近づく足音が聞こえて、俺が食われる! 


……と思ったのに、それ以上近づいてくるような気配はない。


静かなままだ。


ビクビクしながら、薄目を開ける。


「ご、ゴメン……。ね?」


 わずかに頬を赤らめた彼女が、小さく首をかしげていた。


「え……、えっと……。ここのドア、どうやったら開くのかな。ねぇ、知ってる?」


「舞香を返せ!」


「どうして? 私は私だよ」


 そう言って、自分で自分の胸に手を当てた彼女の、その仕草にドキリとする。


こんな状態で、心臓がバクバクしない方がおかしいんだ。


「あのさ、えぇ~と……。圭吾? なのか? お願いがあるの」


「俺にお願いはない!」


「お願い? 何かあるのなら、私が叶えてあげようか?」


 目の前に立った舞香が微笑む。


こちらに向かって伸びてきた両腕に、思わず悲鳴をあげた。


「ひいぃぃ! やめて!」


 その場にうずくまる。


彼女の上靴の動きが止まった。


見上げた俺を、彼女の鋭い眼光が貫いた。


「なるほど。そなたが何を知っているのかは知らぬが、私にも舞香との約束がある。私の存在を、決して舞香以外の人間には知られぬようにすると約束したのだ」


「……。え?」


「だがお前は、私が舞香でないことを知っている。いつ知った?」


 そ、そんなことを言われても……。


彼女の安全を考えるなら、素直に答えるわけにもいかない。

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