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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第2話

「はぁ~……。んだよ、まったく……」


 こんなところ、見たくなかった。


一心に前だけを凝視して突き進む彼女に、ため息をつく。


頭は完全にやめておけと言っている。


それなのに、どうしても体は勝手に動く。


足音を忍ばせ、こっそりと角からのぞき込んだ。


第一校舎へ渡り終わったところで、彼女はキョロキョロと左右を見回している。


迷っているのか? 


階段の方へ向かった。


「いや、だから違うだろ。帰ろう。帰れよ俺。さぁ帰るんだ」


 ヤバいことになんて、巻き込まれたくない。


ここまでのことを、全て知らなかったことにすればいい。


そうすれば今日の夜、明日の朝、学校で何が起こっていようが、彼女がどうなろうが、俺は無関係だ。


帰ろう。


一歩を踏み出す。


コンクリートの冷たい壁に手を滑らせる。


足を動かし、そのまま逃げてしまえばいいのに、ガタンという物音に立ち止まった。


資料室前だ。


何かをガタガタと強く激しく揺らしている。


俺は廊下へ飛び出した。


「何やってんだ!」


 舞香は資料室のドアに、手をかざすようにして立っていた。


その仕草からしてもう、怪しさ全開なんだからたまらない。


俺はいつでも逃げられるように、階段の角にしがみついたまま距離を保って抗議している。


「……。お前こそ、そこで何をしている」


 かざしていた腕を下ろした。


「ちょうどよい所へ来た。この扉を開けろ」


「無理に決まってんだろ、鍵がねぇ!」


「鍵なら開けてやる」


 再び手をかざす。


とのとたん、扉はガタガタと音を立てて揺れ始めた。


「壊れる! 壊れるよ、扉が!」


「破壊しないようにと努力はしているのだが、開ける仕組みが分からぬのだ」


「ねぇ、マジで壊れるからソレやめて!」


 そう訴えたとたん、急に静かになった。


彼女は彼女の姿のまま、こっちを見ている。


「……。お前はそこで何をしている」


「べ、別に……。ただの通りすがりですけど……」


 あんたこそ何者だ! 


俺はお前が舞香に取り憑いた瞬間を目撃してんだぞ! 


帰れ! 自分の世界に帰れ! 


……って言いたいけど、言っていいのかも、言っていけないのかも分からないし、何をされるか分からないから、怖いし……。


じっと見つめ合う。


「あの……。どちらさまでございますか?」


 舞香の体がこちらに向いた。


「この扉を開けてほしいのだ」


「開けてどうするんでしょう」


「アレが見たい」


 彼女は資料室の中を指さした。


どうやら目的は、廊下に飾られているショーゲースの記念品ではないらしい。


だが問題は、俺の身を隠しているこの位置からだと、資料室の中が見られないということだ。


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