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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第4章 第1話

 午後からの授業が始まったものの、その内容なんて一切頭に入ってこない。


体は寒くもないのに、ガタガタ震えている。


やっぱ何かヘンだしあの子。


やっぱ何かヘンだしあの子!


 あの時彼女が反応したのは、第一校舎2階資料室前の廊下を撮影した画像だ。


第一校舎は1階に保健室と図書室があり、2階は職員室と校長室、資料室と会議室がある。


3階は第二校舎と渡り廊下で繋がっていて、そこから上は音楽室や家庭科室、情報室などが入っている。


一般教室はない。


 資料室前に飾られているのは、主に運動部の獲得してきた歴代のトロフィーや記念の盾なんかだ。


ホコリをかぶったようなくすんだガラスケースが、いつから置かれているのか分からないほど、途方もない時の経過を感じさせる。


「……。部活やってた、卒業生とかなのかな」


 その関係で亡くなったりとかして、恨みを持った幽霊? 


それで在校生に取り憑いたとか? 


他にも色々考えてみたけど、考えても分からないものは分からない。


退屈な午後の授業は続き、俺は日の落ちたコンビニ前で見た、彼女のはにかんだような笑顔を思い出す。


あの笑顔は本物だったのかな。


山頂の学校から見下ろす窓には、緑の森が広がっていた。


ま、俺には所詮関係ないことだけど。


関わりたくもないし……。


 そうやって思い悩みながら、ようやく迎えた放課後だ。


部室に寄ろうか、そのまま帰るかの二択で、俺は帰ることにした。


このままうっかり顔を合わせ、資料室に案内しろなんて言われた時には、断り切れる自信がない。


山本には先に帰ることを伝え、慎重に帰宅計画を検討する。


彼女は今日は、演劇部に顔を出すのだろうか。


それとも写真部? 


鉢合わせしないようにしたいが、それをスマホで確認することもままならない。


彼女にバレる可能性があるからだ。


下校時の混雑が一段落したところで、ゆっくりと席を立つ。


考えても無駄だ。


何とかするしかない。


 人気の引いた廊下を、それとなく見渡す。


どうしてこんなにも自分が緊張しなくてはならないのか。


いつもの階段を下りようとして、ふと足を止めた。


ここだと彼女も使用する可能性がある。


写真部へ行くにしても、演劇部の活動場所である体育館へ行くにしても、彼女の教室からだと使用する階段は、最短距離にあるこちら側だ。


迷わず引き返す。


廊下に人のいないのは確認していた。


4階の教室から3階へ下りる。


踊り場をターンしたところで、ハッと何者かの気配を感じた。


恐る恐る顔を上げる。


彼女だ。


その先の3階廊下を真っ直ぐに歩いてゆく。


両腕を付属品のようにダラリとぶら下げ、向かう先は渡り廊下だ。


その先の校舎に、通常教室なんて存在しない。


目的地は間違いなく、資料室だ。


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