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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第9話

「どっかこの辺りに……」


 太古の森の暗がりに、目をこらす。


若い木の立ち並ぶ何でもない傾斜に、その祠はポツリと立っていた。


「あった……」


 何度も見ていた祠だ。


学校ホームページにあった画像とも、日に焼けて変色したパネルとも同じ。


高床式の観音開きの扉に、三角屋根からは二本の角が生えている。


扉には丸い窓のような木枠があり、そこにはかんぬきがかけられていた。


「……すごい。こんなところに……。本当にあった」


「あのヒトが言ってたんだ。多分この近くにあるって」


「そんなことまで話したの?」


「まぁ、そんな感じのこと」


 高さ1.5メートル、横幅だって70㎝あるかないかくらいの大きさだ。


そっと横木を引き抜く。


「最初から、誰も間違ってなかったんだよ。ハクがここに降りてきたのも、荒木さんがこの辺りで、ずっと転生を繰り返してるって言ってたのも……」


「荒木さん? なんで?」


 人の気配がして、振り返った。


「俺がどうかしたのか」


 腕には、小さな女の子になったハクを抱いている。


彼女はそこからぴょんと飛び降りると、真っ直ぐに祠へ駆け寄った。


「あ、ちょっと待っ……」


 ハクの小さな手が、祠の扉に伸びた。


触れたかと思った瞬間、バチンと雷光が走る。


その衝撃に、ハクは痛む手をおさえうずくまった。


ギッと俺たちをにらみつける。


「何かに守られているのか」


 そう言った荒木さんの視線は、俺に向けられていた。


「さっきは普通に、横木を外せたよ?」


 そう言った舞香は、ハクに寄り添う。


ハクは俺を見上げたまま、黙ってうなずいた。


それは、俺に開けろということか? 


祠を振り返ると、その扉に手をかける。


「やっぱりこれが、正解だってことだ」


 まだ新しいようなそれは、音もなくスッと開いた。


中には分厚い座布団に鎮座した、ガラスのような丸い玉が森の闇を透かしている。


そっと手を伸ばす。


触れようとして、その手を止める。


だけど俺は、それを取り出した。


 ひんやりと冷たくて、表面は驚くほどすべすべしていた。


軽いような重いようなそれを、皆の前に差し出す。


「見つけたよ、宝玉」


 周囲を太古からの木々に覆われ、市街地からここまで届く光はわずかだ。


その闇と光りに半分溶けてしまったような宝玉は、静かに輪郭だけを光らせている。


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