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龍神さまのいるところ  作者: 岡智みみか
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第4話

「何をした!」


「何もしてない。お前こそ、何をしようとした」


 額に手を当てる。乗っ取られた? 


いや、俺は乗っ取られてない。


乗っ取られてない乗っ取られてない……。


だから多分、大丈夫! 


舞香はゆらりと起き上がった。


「なるほど、確かにお前には、何かがあったようだ」


 彼女が真っ直ぐに立ち上がったその瞬間、ガクリと体は崩れ落ちた。


咄嗟にその腕を支えたのは、荒木さんだった。


「大丈夫か」


 舞香を支え、その場にまた座り込む。


「あ、荒木さん。離れてください! 危険です」


 舞香は意識を失っているようだった。


荒木さんの腕の中でぐったりとしている彼女の額に、乱れた髪がかかっている。


「あ、荒木さん! いま、舞香の中身はハクですよ! 何されるか分からないから、離れてく……」


 彼の手は、その舞香の前髪を丁寧に整えた。


「だから、危ないって……」


「危険なんてない。お前には分からないのか」


 荒木さんは自分の腕に彼女を抱いたまま、じっと彼女を見つめている。


その視線はまるで、何よりも愛しい者を見つめる視線のようで、めっちゃ近寄りにくい。


めっちゃ近寄りにくい雰囲気ですけど!


「い、妹さんですからね。荒木さんにとっては!」


「妹ではない。後輩だ」


「そりゃそうですよ、舞香はね!」


 仕方ない。


てゆーか、ハクにしたって、このヒトを傷つけるようなことは、しないだろう。


くそっ、ちょっと怖いけど、しょうがない。


ドカドカと近寄る。


俺もすぐ隣にしゃがみこんだ。


「妹……なのか?」


「らしいっすよ」


「なぜ?」


「なぜって……」


 荒木さんは、腕に眠る舞香を見つめている。


それを知っているのは、本当は荒木さん自身なんだけど……。


「舞香はお前に任せる」


「え?」


「頼んだぞ」


 彼の腕にあった彼女の体が、俺の胸に預けられた。


突然のその重みと体温に、びっくりする。


「え! ……。えぇ?」


 ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って……。


うろたえる俺を無視して、荒木さんは立ち上がった。


「ど、どこへ……」


「分からん」


「あの、俺を一人にしないでください……」


 そう言うと、彼はじっと見下ろした。


フッと優しくない顔で笑う。


「お前は大丈夫だ。好きにしろ」


 えぇ……、やっぱヒドい……。


荒木さんは校舎の中へ消えてゆく。


あのヒト、本当に余計なことに関心ないな。


つーか、どうすんだよコレ……。


俺に託されてしまった舞香は、まだ眠っていた。


彼女の背と腕とが、俺の胸と手に接している。


これ以上どこをどう触っていいのかも分からない。


てか、これはハク?

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