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シン・モモタロウ ②「お爺さん」

作者: 半田有希

 川から桃太郎を拾ってきて以来、婆さんは桃太郎にかまけてばかりじゃ。旦那のわしのことなどまるで眼中にないように振りまいよる。老人になっても山に芝刈りに毎日でかけ、家計をなんとか支えてきた。さらに桃太郎が家族となり、家計を圧迫し始めたときも、老体に鞭打って働いてきた。それなのに朝から晩まで「ももたろ~、ももたろう~」ばかりじゃ。

 わしゃ、心底、桃太郎がにくくなった。なぜ、あいつは婆さんが川で洗濯していたときに現れてきたんじゃ。わしの立場がのうなるようになったしもうた。

 そこでわしは考えたんじゃ。

 よし、村長が募集していた鬼退治の征伐隊に桃太郎を推薦してやろう。桃太郎のことだから嫌がるだろう。だが、村一番の力持ちじゃ。村人は全員、賛成するに違いない。そうすれば優しい桃太郎は嫌とは言えなくなるわい。元々、あいつは拾ってきた子だ。家にいなかった子だ。鬼が煮て食おうが、焼いて食おうが、知ったこっちゃないんじゃ。


 村長はわしの提案を受け入れた。そして、とうとう出発の日がやってきた。

「鬼を退治しに行って参ります!」

 桃太郎、猿吉、犬夫、雉介が鬼退治に出発した。

「これで、婆さんと元の生活に戻れるわい」

 しかし、婆さんは「桃太郎~」と毎日泣き続け、部屋から出なくなってしまった。芝刈り以外の家の仕事も、全てわしがやらにゃならん。

 しかも、桃太郎たちは半年過ぎても帰ってこない。鬼に食われた、村で噂が流れ始めた。婆さんは死にたいと言い始め、心を塞ぎ始める。もう幽霊のようにおかしゅうなってしもうた。

 村人は「お前の婆さんはおかしくなった」と言って、わしらを村八分にし始めよる。

 婆さんは何も食えず、言葉も言えん状態だ。このままじゃ死んでしまう。

 何でこうなるんじゃ? 何でわしが思ったとおりにならんのじゃ? とうとう婆さんは「桃太郎やーい」と言って、夜の村を徘徊するようになった。

 あー、わしが悪かった!ずっとわしがお前を放っていたから、いかんかったんだな? 嫉妬などせず、お前にきちんと向きあい優しくしておけば良かった。許しておくれ!桃太郎も帰ってきておくれ!婆さんを救っておくれ!


 そのときだった。「桃太郎がお宝もって帰って来た!」村民が叫んだ。生きて帰ってきたのか? 桃太郎は真っ先に家に戻ってきた。痩せ衰えた婆さんを抱きしめ、桃太郎は涙を流した。その涙は婆さんの額に落ち、流れるように唇に触れた。するとどうしたことか、婆さんの目に輝きが戻り始めた。

「桃太郎、お帰り」そう婆さんは言葉を発した。

「ご心配、おかけしました。桃太郎、無事に戻って参りました」


 わしは目の前にいる桃太郎が見えなくなるほど涙を流し、三人で抱き合った。心から思った。

 良かった、婆さんが戻って、桃太郎が戻って。




最近、小説を書き始めました。

よければ、なんでもいいので、感想をいただければと思います。

よろしくお願いします。

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