第8話 御意ッ!!
パーティーメンバーは自分で探すのが当たり前だ。学園が指定しても上手く行かないのは目に見えているからね。勿論、1年の最初の頃は授業でダンジョンに入り、パーティー行動を徹底的に叩き込まれる。まあ、難易度が低いエリアなので指定されたパーティーでも、ある程度問題なく行くんだけどね。メンバーを入れ替えて、それを何度も繰り返す。1学年400人もいるので、お互いを知るにはこっちの方が手っ取り早いということだろう。授業の模擬戦で実力を隠しながら態と負けて、分かる人にだけ「こ、こいつ、…出来る!」とか、逆に手加減したつもりでも「あれ?やり過ぎちゃいました?」という展開は必要ないらしい。
僕が最初に組んだ華夜ちゃんは白魔導士、または賢者ってところかな。回復・防御魔法・結界・バフ・デバフetc.だけど、攻撃面はからっきし使えないということだった。十分凄いんだけどね。特にデバフは相手の抵抗をある程度無視して掛けることが出来るというのはチートだと思います。華夜ちゃんが凄くても手が足りないので、まずは前衛を探すことにした。
パーティーが続々と出来て行く中、僕は探した。掛け持ちも有りなので焦るつもりはないけど、トップグループは見せ付けてくれる。最早、クランだよ。30人くらいの集団で、その日の都合でメンバーを組めるのは強みだよね。…おっと、メンバー探しに集中しないと。ちなみに生徒の基本ステータスは公開されている。個人情報?命が掛かっているからそんなこと言ってられないよ。ロビーに行くと人が沢山いて、掲示板を食い入るように見ていたり、盛んに話し合いが行われていた。掲示板には仲間募集やダンジョンの情報も有り、僕のように仲間を探している人には丁度いい場所だ。よく来ているが今日は明確に目的がある。
「あっ、いたいた。」
探していた人物は相変わらず掲示板の近くでぼうと立っているだけだった。初めて見た時は魔法使いだと思ってしまった。だって、前髪をざっくり斜めに切り揃えて右目が隠されているし、俯いて影を背負っている姿は黒魔術を使いそうな雰囲気を醸し出していたんだもん。気になって調べてみたら前衛だったんだけどね。でも、能力的にも釣り合いそうだし、ここにいるのは仲間を探しているはずだと思い声を掛けることにした。
「やあ、竜胆さん。少しいいかな?」
「…ッ……ッ……」
「お、落ち着いて!まずは深呼吸しようか!」
う~ん。何か物凄く驚いてるんだけど…。目を見開き、口をぱくぱくさせている。声を出そうにもビックリし過ぎて喋れないみたいだ。過呼吸にならないか心配だよ。落ち着いた頃を見計らい、話を切り出す。
「今日は竜胆さんを勧誘しに来たんだ。僕の仲間になってほしい。」
「…えっと、分からない、です。」
「うん、最初は不安だもんね。でも、前向きに考えてくれると嬉しいな。」
そのあとは世間話をして、お互いを知ることに努めた。やっぱりと言うべきか、竜胆さんは人見知りで困っていたみたいだ。声を掛けることが出来なかったのはまだしも、声を掛けられたのも今回が初めてだと言うのだから驚きだ。一瞬、竜胆さんが複雑な感情を見せたのが気になったが、嬉しかったと言われ結局聞くことは叶わなかった。
翌日からはロビー以外でも竜胆さんを見掛けるようになった。僕の後ろを付いて来て、時々柱に隠れては顔だけ覗かせていた。きっと、僕に話し掛けようと一生懸命に頑張ったんだろう。竜胆さんはとってもシャイな娘だからね。だからここは僕がフォローするべきだよね。
そんなことが1週間くらい続いた頃だった。今日の竜胆さんは何か決意をした表情をしている。と思うのは僕だけかもしれない…。何せ、いつも以上に目が泳いでいて、緊張しているのが丸分かりだ。いつも通りの声音で、急かさないように気を付けて聞き出す。
「…今日は話がある、です。」
「うん、どんな話かな?たのしみだな。」
「…仲間になる話を受けたいと思う、です。」
「本当⁉嬉しいなぁ。改めてよろしくね。竜胆さん!」
握手を求めて手を差し出したが、竜胆さんの返事を聞いて途中で止まる。
「…ぎょ、御意ッ!!」
「ん?御意?」
「…噛んだ、です。」
いや~、ビックリした。仲間じゃなくて部下になるところだったよ。噛んだんなら仕方ないね。恥ずかしがっているから突いたら可哀想だ。
「あっ、もう仲間なんだから楽な喋り方でいいんじゃない?」
「…うん、分かった。私のことは綾女と呼んで。」
「じゃあ、握手をしようか。綾女ちゃん。」
僕の宙に浮いていた右手は、あわわとなった綾女ちゃんに両手で包み込まれた。あれ?これちょっといいかも…。内心ドキドキしてしまったのは秘密だ。
初期のメンバー、華夜ちゃん・綾女ちゃん・僕の3人が揃ったのだ。他のメンバーは夏期休暇明けに加入することになるが、一先ず、僕は一歩を踏み出したのだった。
読み漁ってたら、死ぬかと思ったぜ(更新が遅くなりました)。
ついでに言うと新しい作品が書きたくなってしまった。どうしよう…。
取り敢えず、もう少し温めるとして希望があればあらすじを公開しようかな?




