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第26話 冒頭で大凡予測できる結末

 歪な岩壁に囲まれた洞窟内の通路に不穏な空気が漂っている。時折聞こえる、低く獣の唸りにも似た何かが反響する。気のせいだ。風の音がそう聞こえるだけに違いない。恐怖心を押し隠し、更に進むと広い空間に出る。ダンジョンによくある構造。魔物が待ち伏せしていたりするが、ここにはいないようだ。その代わり―――ぴちょん…ぴちょん…。液体が滴る音がやけに耳に残る。まるで心の波紋を表しているようで、耳障りだ。それにしても、近くで水でも湧いているのだろうか。だが、疑問とは別に胸を占めるは焦燥。理由はこの空間に充満している臭いのためか。どうしても、嫌な想像を掻き立てられてしまう。


 灯りが揺れる。その時、人影を映し出す。どうやら、(うずくま)り、頭を抱えているらしい。具合でも悪いのだろうか。しかし、近づいてみれば違うことに気付く。…そして、水源の正体にも。


 「ああっ!俺は、また上手く殺せなかった!…魔神様、申し訳ございませんっ!!」


 男は水源を見詰めて、嘆き、叫び、許しを請う。それは決して、殺人という罪に対しての物ではない。目の前の一つ、二つ、………六つの骸は切り刻まれており、多量の血が流れ出たことを証明するように蒼白と化していた。パーティーだろうか。見開いたまま光を失った瞳に映った最後の光景は絶望であることは想像に難しくない。


 灯りが揺れる。限界が近いのかチカチカと明滅を繰り返す。あたかも恐怖で歯の根が合わないようではないか。血を啜ったかの様相で、真っ赤に染まった殺人鬼はいつの間にか懺悔を終え、立ち上がっていた。上体がふらふらと定まらないが足取りに迷いはない。何故なら、頭に響く最早こびり付いた使命に従うだけなのだから。


 『殺せ…コロセ…コロ、セ…』


 擦り切れたカセットテープのようにノイズが酷い。だが、どこか懐かしく遠い過去に思いを馳せそうになり、…やめる。男の記憶はぐちゃぐちゃで虫食いだらけだった。過去を振り返る行為は無意味。男にはこの言葉しか残されていないのだ。狂人となっても神に救いを求める。…いや、もしかしたら逆なのかもしれない。


 灯りが消える。赤の池と抜け殻を残し、男が立ち去るとついには照明の魔道具は沈黙する。手慣れた様子で隠し部屋に入ると魔法陣の上に立つ。すると魔法陣が青白く輝きだす。光が対象を包み込むと次の瞬間には男の姿はなくなっていた。空間転移の魔法陣。ダンジョンとダンジョンを繋ぐ魔法の通り道。このことを知っている者は、一部の限られた人間だけだ。


 殺人鬼は彷徨う。ダンジョンを転々としながら使命を果たすために。次こそは必ずと決意の呟きを毎回溢して。


……………

………


♢♢♢


 僕の目の前に、一体のスライムがいる。しゃがみ込み、木の棒で(つつ)いてみるとくすぐったいのか粘性の体を(よじ)りながらぷるぷると震える。最近のスライムは働き者にされているところがあるので尊敬の念を覚えている。最弱から最強。素材としても超優秀。都合良くテイムされている部分に思うところはあるが、今ここにいるスライムだって、もしかしたら大魔王様かもしれないじゃないか。強さを測るのが難しい魔物となっている気がする。油断せず慎重に事に当た―――ぴちょん!


 『あん?なんか踏んだか?』

 「………」


 ―――合掌


 「ゴミ焼却は順調だね。」

 『ジュアンも消化不良だったから、喜々としてやがる。…見ろよ、あの顔。』

 「…正直、不気味でやんすね。」


 魔石集めの帰りにゴブリンの大規模な巣を発見したんだけど、それを駆除しているところだよ。ゴブリン退治は専門家に任せてもいいけど、無関心はよろしくない。女の子の敵は僕が許さない!なんてね。兎にも角にも、規模の大きさから早めの処理が必要だろうと判断し、ジュアンの<炎龍>で洞窟内を焼き払っているってわけ。わざわざ中に入って悪臭塗れになる必要もないし、汚ねぇゴブリンを捌いて魔石を回収するのも手間だからね。焼却後は魔石だけが残り、同時に消毒も出来るって寸法さ。汚物は消毒ってこういう意味だったんだね。勿論、人がいないことはヤスが念入りに調べてくれているから安心して実行している。僕達は洞窟から出てくる、または巣に戻って来るゴブリンに備えて警戒している。


 ジュアンは直径1mはありそうな炎の胴体を持つ、龍を(かたど)った魔法を巧みに操っている。老け顔に仏頂面がデフォルトの彼の顔は、今は歪んでいる。きひひ、と笑い声が聞こえてきそうな程に口端を上げているのだから。仲間とはいえ、モモとヤスの感性と同じく不気味だと内心同意する。


♢♢♢


 ゴミ掃除も無事に完了し、学園に戻って来た僕達はその場で解散した。夏期休暇は、後1週間だけどパーティーを組むのは今日で最後だ。モモはどうせ課題を終えていないだろうから配慮した結果だ。だから、泣き付いて来るなよ!僕を頼っても無駄だからね!…さて、図書館でも行くか。


 「ハル君、また調べ物?」

 「うん。自分のことだからね。」

 「…悠翔、いつでも協力する。言って。」


 礼を言い、二人の申し出を断る。そんないつものやり取りをして歩き出す。僕が調べているのは例の魔力弾について。正直なところ、調べても無駄な気がして、身が入っていなかったりする。だからか、当初から華夜ちゃんと綾女ちゃんの参加を辞退してもらっていた。考えてみれば、僕が女の子と調べ物を一緒にするイベントを逃すはずがないよね。それに、調べるのは今日で最後になると思うし…。


 学園が誇る7階建ての叡智の塔たる大図書館を一度見上げてから足を踏み入れる。その瞬間、世界が変わる。空調が効いており、本の独特の香りが鼻腔をくすぐる。5階まで吹き抜けとなっていて上下左右、視界の全てを本棚で埋め尽くす。この光景を見れば誰もが圧倒され、森羅万象を感じることだろう。


 僕は一歩、世界から外れる。格好良く言ったけど、図書室から出て階段で上を目指す。6階、7階は書庫になっていて、本になっていない書類やメモ程度の物も収められているのだ。誰もいない階段を上り5階への踊り場に差し掛かった時、ふと勇壮な調べが降って来た。が―――


 「あっ………。」


 そんな呼気が漏れたようなか細い女の子の声と共に不協和音が混ざり、見上げた僕の顔面に騎士甲冑が落っこちて来た。


 (あー。下、見づらそうだもんね。しかも、(つまず)いちゃったんだね。それに僕がいなければ、余裕で体勢直せたでしょ。)


 既に顔面ブロックの覚悟を決めた僕の内心に焦りはない。一欠片の曇りもないと言っていい。そう。今、目の前に落下中のよく磨かれた甲冑のように。わぁ、キレイだなぁ。あれ?この鎧、虹色に光っ―――ぽよん


 擬音にするなら、まさにそれだろう。想定していた衝撃はなく、寧ろ真逆の柔らかく、温かな感触が伝わって来る。どうやら、僕の顔に全裸の女の子が乗っているらしい。…どういうこと?衝撃が少なかったのもエアバッグならぬ、おっぱいバッグが作動した結果みたいだね。(しぼ)むことのないおっぱいバッグから目線を上げると霧里瑠唯が分かり易く目をぐるぐるさせ、混乱していた。


 (ふっ。僕は知ってるよ。動揺して下手に動くと酷い目に合うんでしょ?大丈夫!僕は冷静だ。…ふへへ。おっと、危ない!考えろ…。ここから無事に脱出する方法を考えるんだ。)


……………

………

皆さん、お久しぶりです。俺です。

やっと書けました。ただ、時間が経って1章を読み返してみると書こうとしていた物とズレていたり、なんでこんなこと書いたのか自分で自分が分からなくなりました。

………まあ、いっか!

そんなこんなで、第2章!はっじまっるよ~!!

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